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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、5カ月半ぶりの高値圏

連載 2023-09-04

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=218.50円まで上昇して3月13日以来の高値を更新した後、210円台で揉み合う展開になった。

 8月16日には2021年9月以来の安値更新となる194.00円まで値下がりしていたが、そこからわずか8営業日後の8月28日には218.50円まで、最大24.50円(12.6%)の急伸地合が形成されている。直接的には中国経済対策への期待感が安値修正を促した影響だが、7月から8月上旬にかけて大きく売り込まれていた反動で、反発局面で売り方が損切りを迫られる踏み上げ相場に発展したとみられる。出来高が急増する一方、取組高が急減していることも、踏み上げ相場の発生を示唆している。ただし、その間に需給環境・見通しに大きな変化が生じた訳ではなく、210円台では上げ一服となった。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万3,000元台前半で底固く推移している。大きな値動きには発展していないが、中心限月ベースだと1月下旬以来の高値圏を維持している。中国経済の減速懸念に変化は生じていないが、中国政府が株価対策などを相次いで打ち出していることで、大型景気対策への期待感が相場を下支えしている。

 実際に中国経済に対する信頼感を取り戻すような景気対策が打ち出されるのかは疑問の声も強いが、売りポジション保有のリスクが警戒され、修正高局面への移行が進んでいる。ゴム相場に限らず、非鉄金属や鉄鉱石、石炭相場なども修正高が促されている。コモディティ市場全体で中国リスクの織り込みが一服し、安値修正局面に移行しており、その流れの中でゴム相場も値位置を切り上げた状態と評価できる。

 このため、改めて中国リスクを織り込む形で下値模索の展開になるのか、それとも最近の反発を支持するような大規模景気対策が打ち出されて底入れ感が強まるのかが、今後の焦点になる。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、8月31日時点で前週比0.4%高の1キロ=48.18バーツ。8月下旬は45バーツ台から値位置を切り上げたが、消費地相場の上げ一服後は値動きが鈍化している。タイ気象庁からは豪雨や洪水被害に対する警告も出されているが、もっぱら消費地相場と連動した上昇だったことが確認できる。供給リスクのプレミアム加算の動きは鈍く、JPXゴム先物市場でも期近限月に対して積極的にプレミアムを加算していくような動きは確認できない。

 為替市場では、2022年11月7日以来となる1ドル=147.36円まで円安・ドル高が進行する場面もみられたが、大きな値動きには発展しなかった。為替要因での積極的な売買は見送られた。

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