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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、需要不安が上値を抑える

連載 2023-05-08

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=210円を挟んでやや上値の重い展開になった。中国経済の復調期待を背景に、4月19日には215.10円まで値上がりしていた。しかし、その後は改めて中国を中心とした世界経済の減速懸念を織り込む動きが優勢になり、上げ一服となった。一方で、改めて大きく値を崩すには至らず、全般的に決め手を欠いた。上海ゴム相場の動向に一喜一憂する展開になったが、その上海ゴム相場の方向性が定まらなかった。

 上海ゴム先物相場は、4月24日安値が1トン=1万1,645元、25日高値が1万2,230元となった。需要不安の上値圧迫がみられる一方、下げ過ぎ感から安値修正の動きもみられ、値幅は大きかったものの方向性が定まらなかった。

 産業用素材市況全体を見渡すと、需要不安の織り込みが優勢だった。大連市場では鉄鉱石相場が2022年11月前半以来の安値を更新したが、ロンドン非鉄金属相場もじり安の展開になり、NY原油相場も4月の最安値を更新した。何か明確な材料が浮上したわけではないが、世界経済の漠然とした減速懸念、資源需要の停滞リスクを織り込む動きが優勢になった。

 5月1~3日が中国労働節の連休になるため、カレンダー要因で資源需要が抑制された可能性も指摘されているが、マーケットでは何か表面化していない経済トラブルが発生しているのではないかとの警戒感が広がった。この結果、上海ゴム相場は足元の良好な中国経済指標と先行き不透明感との狭間で揺れ動く不安定な地合になった。その結果が、上げ一服感が強まりながらも、値崩れは回避される不安定な地合を促した。

 タイ中央ゴム市場の集荷量はUSS、RSSともに低迷している。現物相場は4月27日時点でUSSが前週比3.2%安の1キロ=47.40バーツ、RSSが同0.4%高の50.20バーツとなった。RSSは50バーツの節目を若干上回る水準で小動きだった。減産期型の値上がり圧力は確認できていない。供給リスクよりも需要リスクの消化が優先されてる地合が続いている。

 4月24日にJPXゴム先物相場の4月限が納会を迎えたが、受渡価格は200.40円となった。3月限の203.20円を下回り、3カ月連続で低下している。受渡価格としては2021年9月以来の安値であり、ゴム相場の実勢が依然として緩やかな悪化傾向を維持していることが確認されている。200円の節目割れは回避されたが、当限の200円水準での安値低迷状態が、少なくとも4月24日時点では支持される環境にあったことが確認できる。4月28日時点で当限と6番限のサヤは2.40円の順サヤと、フラット状態に近づいた。

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