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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、需要不安と円高で戻り売り

連載 2023-04-10

マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=214.30円まで切り返した後、200円台中盤まで反落する不安定な値動きになった。週前半は世界的な株高や原油高を背景に安値修正の展開が続き、3月16日以来の高値を更新した。しかし、その後は改めて需要不安を織り込む動きが優勢になり、210円の節目から下振れした。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台を回復した後、1万1,000元台後半まで反落する展開になった。株高、原油高環境で安値修正の動きが加速したが、最終的には3月下旬に安値修正が進む前の価格水準に回帰している。

 中国の3月財新製造業PMIは前月の51.6から50.0まで低下した。また、米国の3月ISM製造業指数は47.7から46.3まで低下している。米中で製造業の活動鈍化を示す指標が相次いで発表されたことが、世界経済の減速懸念からゴム相場の上値を圧迫した。特に中国経済の回復が想定されていた程に力強くないとの慎重な見方が広がったことは、上海ゴム相場の上値を圧迫した。

 一方、原油相場が急伸したことはポジティブ。4月2日にサウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)プラス参加国が、突然に合計で日量115.7万バレルの減産を5月から年末まで実施すると発表した。ロシアも50万バレルの減産を年末まで継続すると発表した。世界の石油需要の約1.7%に相当する大規模減産が表明されたことで、原油相場が急伸している。これを受けてゴム相場も3日の取引で急伸したが、一時的な値動きに留まった。原油高を受けての買いよりも、需要不安を受けての売りの方が優勢だった。

 産地では3月の時点で既に減産傾向が強くなっていたが、4月入りしたことで減産期のピークを迎えている。タイ中央ゴム市場でも集荷量が著しく落ち込んでいる。ただ、減産期を手掛かりに、産地主導で安値修正を進めるような動きは見られなかった。4月5日時点の現物相場は、USSが前週比1.7%安の1キロ=47.18バーツ、RSSが同0.3%安の50.36バーツとなっている。

 JPXゴム相場でも、期近限月に対してプレミアムを加算するような動きはみられず、順サヤ(期近安・期先高)環境が維持されている。当限は200円台前半で上値を抑えられており、株高環境でも期先限月主導で上昇地合を維持することは難しかった。

 また、為替が円高・ドル安傾向を強めたことも、円建てゴム相場にはネガティブ。4月3日の1ドル=133.75円をピークに、131円台まで値下がりしている。高値から2円超の円高圧力も、需要不安と並んでゴム相場の上値圧迫要因として機能した。

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