【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、中国コロナ拡大も小幅安
連載 2022-11-28
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=210円台前半から中盤まで小幅値位置を切り下げた。上海ゴム相場は方向性を欠く不安定な地合になったが、原油安や円高を手掛かりにやや調整売り優勢の展開になった。ただ、本格的に売り込んでいくような動きまでは見られず、約3週間ぶりの安値を更新しているが、決定打は欠いた。
上海ゴム先物相場は11月21日の取引で1トン=1万2,255元まで急落したが、その後は1万2,000元台後半まで切り返し、結果的に明確な方向性を打ち出すには至らなかった。中国では新型コロナウイルスの感染被害が悪化の一途を辿っているが、ゴム相場は瞬間的に上値の重さを見せたものの決定打を欠いた。
中国の新型コロナ新規感染者数は、23日に過去最多を更新している。上海市がロックダウン(都市封鎖)下にあった4月半ばよりも厳しい感染状況になっている。中国指導部は、従来と比較するとある程度の感染拡大を容認する姿勢に傾斜しているが、それでも地方政府レベルで検査や隔離、ロックダウンなどの対策が相次いで発動しており、中国経済への影響は避けられない状況になっている。ロックダウン対象地域から市民が逃げ出す暴動も報告されており、混乱状態はエスカレートしている。
中国政府としては、ゼロコロナ政策は堅持しつつも、感染対策と経済対策とのバランスをどのように取るのか、難しい判断を迫られる局面になっている。原油や金属市場では需要不安を織り込む動きが優勢であり、上海ゴム相場も一時は急落している。ただ、従来通りに明確な方向性を打ち出すことは拒否されており、高止まり状態が維持されている。なぜ上海ゴム相場のみが高値を維持しているのか明確な理由は見当たらず、投機色の強さが否めない状況になっている。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、11月24日時点でUSSが前週比0.6%安の1キロ=44.77バーツ、RSSが同1.2%安の46.69バーツ。産地相場は一貫して安値低迷状態にある。USSの集荷量が若干改善傾向にあることはネガティブ。RSSの集荷量は従来通りに安定している。産地主導の値崩れまでは見られないが、上海ゴム相場の堅調地合とは連動しない値動きが続いている。
為替市場では、ドル/円相場がボックス気味の展開になっている。米金融政策環境の評価が定まらず、一時的に円安に振れた後に円高に転じるなど、為替要因では明確なトレンド形成が難しい状況になっている。原油相場が年初来安値に迫る急落地合になっていることはネガティブだが、ゴム相場との間に明確な相関関係は認められていない。
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