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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急激な円安でも上値重い

連載 2022-09-12

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=210円台中盤まで値下がりする展開になった。前週に続いて中国経済の減速懸念が強く、昨年10月8日以来の安値を更新している。為替相場は大きく円安に振れたが、為替要因に基づく買い圧力よりも、需要要因に基づく売り圧力が優勢だった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台前半まで下落している。特段の新規材料は見当たらなかったが、需要環境に対しては根強い警戒感があり、戻り売り優勢の展開が続いている。

 中国では各地で新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が展開されている。米CNNによると、74都市で何らかの行動規制が導入され、3億人に影響が生じている。中国政府はゼロコロナ政策を堅持しており、経済活動への影響が警戒されている。中国全土の新規感染者数は1日当たり1,000人超の水準であり、中国の人口を考慮すれば、感染被害は限定的とも言える。ただ、中国政府は共産党大会を前に明らかに感染対策を強化しており、他の主要都市にもロックダウンが広がるリスクが警戒されている。

 中国の8月貿易統計によると、輸出は前年同月比7.1%増(前月は同18.0%増)、輸入は同0.3%増(同2.3%増)となっている。内需の落ち込みで輸入が抑制されていることに加えて、世界経済の減速で輸出も鈍化している。中国市場では、鉄鉱石や石炭、銅相場なども上値を圧迫されており、その流れで上海ゴム相場も上値の重さが目立った。さらに中国経済の減速リスクを織り込むかが焦点になる。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、9月8日時点でUSSが前週比0.9%安の1キロ=45.29バーツ、RSSが同0.2%高の47.13バーツとなっている。ともに安値更新を続けているが、前週比ではほぼ横ばいに近い値動きに留まった。台風シーズンとあって局地的な洪水被害も報告されているが、集荷量の大幅な落ち込みなどは確認できない。さらに大きな天候障害の発生がみられるのか、生産者がどこまでの安値を容認するのかが焦点になる。

 一方、為替市場では急激な円安圧力が発生している。1ドル=145円の節目に迫り、1998年以来の円安・ドル高水準になっている。国内では天然ゴムの輸入コストの増大要因になり、現在のシンガポール相場を基準にすると、各種輸入コストを考慮に入れなくても1円の円安・ドル高で円建てゴム相場は1.4~1.5円程度値上がりする計算になる。最大で4.78円の円安・ドル高になったことで円建てゴム相場は為替要因で6.9~7.0円程度の値上がりが支持されたが、為替要因で買い進む動きは限定された。

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