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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、1年ぶり高値更新後に反落

連載 2022-04-11

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=275.10円まで急伸して2021年3月以来の高値を更新した後、260円水準まで反落する展開になった。産地相場の急伸地合が続くなか、上値追いの展開が続いている。ただ、急ピッチな上昇の反動で利食い売りを進める動きも強く、高値からは急反落する荒れた展開になった。

 上海ゴム先物相場は4月4~5日が清明節で休場となったが、連休明け後は1万3,000元台後半で底固さを見せた後、突然、1万3,000元台中盤まで軟化した。中国では新型コロナウイルスの感染被害が拡大しており、上海市がロックダウン(都市封鎖)を延長するなど、経済的な混乱は続いている。上海港ではコンテナ船の陸揚げ停止など、物流面でも混乱が報告されている。

 一方で、「ゼロ・コロナ」政策による経済的なダメージをカバーするために大規模な経済対策が打たれるとの期待感もあり、強弱感が交錯した不安定な地合が続いている。中国では鉄鉱石や石炭、銅などの資源価格が総じて底固く推移している。

 産地相場は堅調地合を保っている。4月は減産状態がピークを迎える傾向が強く、低集荷環境が素直に産地相場を押し上げている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、4月7日時点でUSSが前週比4.2%高の69.95バーツ、RSSが同4.2%高の76.01バーツ。消費地相場の動向と関係なく産地相場は一貫して上値追いの展開を維持しており、年初来高値更新が続いている。季節要因のみでどこまでの値上がりが可能かを打診しよう。

 例年の傾向としては、集荷量が改善するのは5月以降になるため、4月中の集荷環境の劇的な改善は想定しづらい。太平洋の赤道付近では今年最初の台風が発生する兆候も見られるが、降水量の本格的な回復までは時間が必要だろう。このため、「乾季→低集荷→産地相場高」のトレンドが維持されやすいが、過熱感の高まりには注意が必要な状況になっている。

 為替市場で改めて円安圧力が強くなっていることはポジティブ。1ドル=125円の節目突破後は調整局面入りしていたが、急ピッチな米金融引き締めに対する警戒感が蒸し返されるなか、改めて円安・ドル高傾向が強くなっている。日本銀行の黒田総裁が、為替相場の「変動はやや急」と懸念を表明しているが、5月にも米国は大幅利上げ、保有資産売却に踏み切る可能性があり、円安・ドル高傾向が円建てゴム相場をサポートする展開は維持されている。

 ウクライナでは、ロシア軍が民間人を「大量虐殺」したとの批判が高まっている。早期の停戦合意が見通せない状況だが、ゴム相場に対する影響は限定されている。

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