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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海ゴム主導で急反落

連載 2022-01-31

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=230円台中盤まで急落する展開になった。上海ゴム相場の堅調地合と連動して上値追いの展開になり、1月19日高値は253.10円に達していた。しかし、その上海ゴム相場が一気に値を崩したことで、25日安値は233.00円となり、約4週間ぶりの安値を更新している。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万5,000元の節目を挟んで底固い展開が続いていたが、1月21日の取引で突然、急落地合に転じ、1万4,000元台前半までコアレンジを切り下げている。1万4,000元の節目割れは回避されているが、2021年11月11日以来の安値を更新している。

 上海ゴム相場主導の展開が続いているが、投機色が強い値動きになっている。高値から1,000元幅の急落地合になっているが、その間にゴム需給環境に目立った変化は見られない。中国経済に対する信認回復で安値修正を進めていた相場が1万5,000元水準を完全には攻略できず、調整局面入りしている。2021年12月と同様に1万4,000元台前半で下げ止まることが可能か否かを見ながらの展開になる。ただ、中国では1月31日から春節の連休入りすることになり、売買テーマが乏しい時間に移行する。

 需要環境に関しては、新車用タイヤ需要の改善期待は強い。半導体不足やサプライチェーンの混乱で自動車メーカーからは減産発表も未だ続いているが、最悪期は脱したとの評価は維持されている。各国の「オミクロン株」の感染被害をみても、比較的短期間で収束する傾向が強く、ゴム需要環境の改善期待は維持されている。

 ウクライナや中東情勢の緊迫化で原油相場が2014年10月以来の高値を更新していること、鉄鉱石相場が約3カ月半ぶりの高値を更新するなど、資源価格全体が底固さを見せていることもポジティブ。ただ、上海ゴム相場は乱高下を繰り返しており、2021年10月以降は1万4,000元台をコアとしたボックス気味の相場展開が続いている。

 供給サイドでは、トンガの火山噴火の影響も警戒されたが、気象環境に目立った変化は確認されていない。タイではやや乾燥傾向が強くなっているが、インドネシアやマレーシアでは十分な降雨が観測されている。季節的にはこれから減産期に向かうことになるが、産地主導の価格形成は行われていない。タイ中央ゴム市場の集荷量は安定しており、現物相場は1月27日時点でUSSが前週比0.1%安の1キロ=55.17バーツ、RSSが同0.7%安の57.93バーツ。もっぱら消費地相場の値動きを見ながらの価格形成になっており、マーケットでも供給サイドに対する関心は低い。

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