【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、下げ一服も方向性を欠く
連載 2021-11-15
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、RSSが1キロ=220円水準で揉み合う展開になった。原油相場の急落と連動して11月5日に218.30円まで値下がりしたが、その後は原油安が一服したこともあり、220円台前半まで若干の切り返しを見せている。ただ、原油相場の反発局面でもゴム相場を積極的に買い進むような動きまではみられず、決定打を欠いた。出来高も低迷傾向が目立った。
上海ゴム先物相場は11月8日に1トン=1万3,635元まで値下がりして9月27日以来の安値を更新したが、その後は1万4,000元の節目水準まで小幅切り返す展開になっている。
11月入りしてからは高止まりしていた原油相場が持高調整の動きで急落し、それと連動してゴム相場もボックス気味の相場展開から下押しされた。しかし、その後は原油相場が比較的短時間で安値から大きく切り返したにもかかわらず、ゴム相場は下げ一服となるのに精一杯であり、原油相場との連動性が薄れ、決め手難の相場環境に陥った。
需要サイドでは、米議会で1兆ドル規模の大型インフラ投資法案が可決されたことはポジティブ。バイデン政権の目玉政策の一つであり、道路や橋などの大型インフラ整備に大規模な資金が投入されることになる。こうした動きを受けて、株式市場では建設機材キャタピラーなど関連企業が大きく買われ、また銅などの素材市況に対しても買いが膨らんだ。インフラ投資はトラック向けなど大型タイヤ需要の拡大にも直結するが、ゴム相場に関しては目立った反応を見せることはなかった。
一方、供給サイドでは東南アジア諸国で新型コロナウイルス対策の入国制限の緩和が進んでいることは、供給環境の安定化に寄与しやすくなる。雨がちな天候は続いているが、豪雨や洪水といった大規模な天候障害が報告されていないこともあり、供給サイドのリスクプレミアム加算は求められていない。タイ中央ゴム市場の集荷量は安定しており、現物相場は11月11日時点でUSSが前週比0.8%高の1キロ=53.01バーツ、RSSが同0.5%高の56.18バーツ。消費地相場の下げ一服と連動した動きになっており、産地供給環境はあまり材料視されていない。
上海期貨取引所の認証在庫(11月5日時点)は、過去4週間で20.0%増加している。大阪取引所の生ゴム指定倉庫在庫(10月31日時点)も、過去1カ月で6.2%増加している。しかし、在庫増加傾向もあまり材料視されておらず、ゴム需給よりも上海ゴム市場の投機マネーの動向が注目される地合が続いている。
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