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気まぐれシリーズ「気になったので聞いてみた」④

航空機はなぜ滑らない?

連載 2017-01-24


 新年が明けてから随分と経ちましたが、新年明けましておめでとうございます。本年も気まぐれシリーズ「気になったので聞いてみた」をよろしくお願いします。

 さて、今回の話は受験生の大好きな「滑らない」話です。もっとも、受験には全く関係のない話なので、その点はあしからず。

 この冬は、日本海側を中心に大雪のニュースをよく目にします。

 先日、そんなニュースを見ていて、ふと気になりました。「航空機はなぜ滑らないの?」と。航空機は、自動車よりもはるかに重く、はるかに速いわけです。降雪の日は、離着陸時に2、3機くらいズルッと滑りそうなものですが、そういったシーンは見たことがありません。あれだけ重く、速いのもがなぜ滑らないのか。気になったので「当事者」に聞いてみました。

 まず、お話を伺ったのは某タイヤメーカーの方。自動車と同様にスタッドレスタイヤが航空機用にもあるのではと思ったのです。冬道にはスタッドレス。皆さんも着用していますか。

 「航空機用タイヤに冬用はありません」

 ……ないそうです、スタッドレス。うーん、想定外。航空機といえども「冬道にはやっぱりスタッドレスですよね」と答えまで用意していたのですが、あえなく撃沈。確かに、航空機は寒い地域と寒い地域とを結ぶだけでなく、例えば新千歳と那覇といったように寒い地域と暑い地域を結ぶ路線もありますからね。じゃあ、いよいよなぜ滑らないの? Whyです。

 続いて、空港を管理している国土交通省東京航空局土木建築課の方にお話を伺いました。

 「滑走路はまず除雪を行いますが、それは表面の雪を除けるだけです。そのあとに、ささらを使用し滑走路の路面を出します。この路面を出すことによって、タイヤとの摩擦が生じるようになるわけです。また滑走路にはグルービングといって排水のための溝が切ってあります。この溝も摩擦係数の一助になっています。

 凍結に対しては、凍結防止剤を散布します。ただ、凍結防止剤についても、一般の道路で使用されている、塩分を含んだものは使用しません。塩分は航空機の錆に繋がりますので、錆びることのない薬剤を散布しています」

 なるほど。雪が降ろうと、凍結するほど寒かろうと、航空機が安全に離着陸できるのは、きちんとした滑走路の整備があるおかげなのですね。作業者の皆さん、寒い中ご苦労様です。

 ちなみに新千歳空港などの積雪空港では、そうした除雪等とは別の部門で、滑走路の摩擦係数を算出し、各航空会社にその数値を提供しているそうです。各航空会社はその摩擦係数を自社の運行基準と照らし合わせ、運行するかどうかの判断をしているのだとか。

 そして「空港の閉鎖もない」のだそうです。除雪のために滑走路を閉鎖することはあるのですが、空港そのものを閉鎖にすることはなく、各航空会社が全便欠航した場合、そのように見えるだけのようです。

 受験には出ませんが、大変勉強になりました。聞いてみるものですね。

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