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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、当限急伸も期先は不安定

連載 2021-01-18

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=230~250円の水準で方向性を欠く展開になった。昨年12月は年末に向けて調整売りが広がり、一時218.00円まで下値を切り下げた。年明け後は押し目買いで一気に250円の節目に迫る展開になったが、同水準では調整売りを進める動きが強く、結果的に明確な方向性を打ち出せていない。

 上海ゴム先物相場も、1トン=1万3,570元から一時1万5,115元まで切り返したが、その後は再び1万4,000元台前半まで軟化している。

 JPXゴム、上海ゴムともにチャートは典型的な三角持ち合い相場を形成しており、玉整理次第の方向性に乏しい展開が繰り返されている。JPXゴム市場では積極的な売買を見送る動きも目立ち、売買高が急速に落ち込んでいる。

 米国では1月20日にバイデン新大統領の就任式を控えているが、5日のジョージア州上院2議席の決選投票で民主党が勝利し、いわゆる「トリプル・ブルー」で向こう4年間は安定した政策運営が想定できる状況になっている。大規模な経済対策やインフラ投資に伴う需要拡大への期待感から非鉄金属相場や原油、株価などは総じて底固く推移しているが、ゴム相場はその恩恵を受けることができず、不安定な値動きが続いている。昨年10月に一時292.90円まで急騰した後の反動局面が続いており、不規則な値動きが繰り返されている。

 産地相場も方向性を欠いている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、1月14日時点でUSSが前週比3.3%安の1キロ=57.00バーツ、RSSが同3.9%安の59.90バーツ。上海ゴム主導の展開が続いており、年初から急反発していたが、高値から大きく下押しされる不安定な地合になっている。

 タイではウインタリング(落葉期)の時期が迫っているが、足元の集荷環境は安定している。インドネシアやマレーシアでは天候不順や労働力不足の問題も指摘されているが、産地主導の価格形成は見送られている。日本の気象庁は、春にラニーニャ現象が解消に向かう可能性を指摘しているが、マーケットの反応は限定的。

 相場テーマが定まらない玉整理次第の展開から抜け出すことができるのかが、1月下旬の焦点になる。

 一方で、こうした方向性に乏しい展開になっているのは期先限月であり、当限はこれとは全く異なる値動きを見せている。昨年末の268.80円に対して、1月14日の取引では300円台に乗せる急伸地合になっている。この結果、当先の逆サヤ(期近高・期先安)は60円を超える状態になっているが、サヤ修正の動きは見送られている。

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