マーケットアナリティクス
天然ゴムの動向、乱高下する不安定な地合に
連載 2020-11-23
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=241.50円まで値上がりして11月2日以来の高値を更新した後、220円台まで反落する不安定な値動きになった。底入れから安値修正が打診されていたが、早くも上げ一服となっている。
上海ゴム先物相場も、1トン=1万4,830元まで値上がりして11月9日以来の高値を更新した後、1万4,000元台前半まで軟化する展開になった。押し目買いが膨らんでいたが、本格的な上昇再開には至らず、方向性を打ち出せていない。
マーケット全体を見渡すと、新型コロナウイルスのワクチン開発に対する期待感が強まる一方、足元では欧米を中心に感染被害が拡大しており、株価や為替相場は全般的に不安定化している。ただ、ゴム市場ではワクチンによる経済活動の正常化を先取りする動きも、逆に足元の感染被害拡大による経済活動の鈍化を織り込む動きもみられず、需要サイドに対する関心の低さが再確認できる状況になっている。
上海ゴム相場の不安定化に関しては、為替要因の影響が大きい。中国通貨人民元は対ドルで2018年6月以来の高値を更新しており、通貨高が人民元建ての上海ゴム相場を下押ししている。上海株式相場は総じて底固く推移しており、さらには中国政府が自動車販売奨励策を検討中と国営メディアが報じる中、本来であれば上海ゴム相場は上昇しやすい環境にあった。しかし、人民元相場の高値更新が続く中、株価動向とは関係なく上値の重い展開になっている。JPXゴム相場に関しては、上海ゴム相場安に加えて円高もネガティブで、為替環境に対する関心が高まっている。
一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、11月19日時点でUSSが前週比3.5%安の1キロ=60.40バーツ、RSSが同6.1%安の62.40バーツとなっている。前週は集荷量の落ち込みが産地相場を改めて押し上げていたが、その後は突然に集荷量が上向いたことが、産地相場を圧迫している。
産地相場は集荷量の水準に敏感に反応しているため、このまま安定した集荷量を得られるのか、それとも一時的な集荷増に留まるのかが焦点になる。ラニーニャ現象の影響で世界的に天候は不安定化しやすい状況にあるが、集荷動向を眺めながら供給リスクのプレミアム加算の必要性を議論する地合が続きやすい。
大阪取引所の生ゴム指定倉庫在庫は、10月20日時点で4,148トンとなっている。前年同期を67.1%下回った在庫水準で年末に向かうことになる。来年の減産期に向けて緊張感を強いられる在庫水準だが、マーケットの反応は限定的。短期集荷動向に一喜一憂する天候相場型の値動きが続きやすい。
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