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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急落続くも下げ渋り始める

連載 2019-08-19


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=160.70円まで急落した後、下げ一服となっている。

 産地相場の急落、米中貿易摩擦を背景とした世界経済の減速懸念を背景に、昨年12月12日以来の安値を更新した。ただ、その後は極端なリスクオフ圧力を巻き戻す動きもみられ、自立反発的な動きから160円台後半まで切り返し、下げ幅を縮小している。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、8月8日時点でUSSが前週比6.2%安の1キロ=39.85バーツ、RSSが同10.3%安の40.15バーツと急落地合が続いている。USSに続いてRSSも一時40バーツの節目を下抜き、安値更新サイクルは維持されている。

 ただ、40バーツ割れに対しては生産コストを割り込んでいるとの警戒感もあり、このまま産地主導の下げが続くのかは疑問視する声も強まり始めている。

 実際に40バーツ割れと前後して集荷量が落ち込んでおり、農家の在庫売り渋りが始まったリスクに対しても警戒の声が聞かれる。

 生産国は現時点では目立った動きを見せていない。タイ、インドネシア、マレーシアの輸出規制は7月末で終了したが、改めて市況対策を実施するのか、具体的な動きは報告されていない。ただ、現在は4-7月期に輸出規制を行うことを決定した当時の価格水準を下回っており、農家からも政策介入を求める声が強まり易い。いつ生産国が価格防衛に動き始めるのか分からないとの不安心理も、ゴム相場をサポートし始めている。

 一方、米中対立は深刻化している。トランプ米大統領が3,000億ドル相当の中国製品に対する課税を発表したのに続き、米財務省が中国を「為替操作国」に指定している。これに対して中国は、米国産農産物の購入を一時停止するなど対決姿勢を強めている。7月30-31日にようやく通商協議が再開されたばかりだが、このまま米中両国の対立がエスカレートしていけば、世界経済に対するダメージは大きなものにならざるを得ない。

 経済見通しの下方修正は、資源需要見通しの悪化に直結することになる。実際に銅や原油など他の産業用素材市況は軒並み大きく下落している。また、株価急落や円急伸といった動きがみられると、パニック的な急落地合に発展する可能性もあり、マーケット環境全体の地合にも注意が求められる。

 産地相場の急落にブレーキが掛かるのか、米中対立を背景としたリスクオフ圧力にブレーキが掛かるのかの二点が、ゴム相場の急落が更に続くのか、下げ一服状態をもたらすのかの鍵を握ることになる。

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