連載コラム「白耳義通信」31
「消す? 消さない?」
連載 2019-04-17
また、消しゴムのファンを増やしました!
何のことか分からない…ということであれば、こちら(https://gomuhouchi.com/serialization/8517/)を参照して下さい。今回はオーケストラの練習中の出来事でした。指揮者からの指示が変わったので、隣に座っていたオケのメンバーが楽譜に書き込んだ印を消す必要があったのです。そこで筆箱に入れていた私の消しゴムに目が留まり「貸してくれないか」と言ってきました。内心「待ってました!」と、これから起こることを想像すると自然に笑みがこぼれます。消している時からみるみる表情が変わっていくのが分かりました。日本製の消しゴムは「消し味」バツグンなのです。余りの凄さに何かを書いては消し、書いては消しを繰り返す始末。ここまで喜んでくれたのですから、買い置きしていた消しゴムを翌日プレゼントしたことは言うまでもありません。
しかし何故ヨーロッパの消しゴムは「消し味」が悪いのでしょうか? 教育現場を覗くとその答えが見つかりそうです。通常小学校一年生は鉛筆を使うようですが、二年生以降はボールペンでノートを取ります(ボールペンが普及していなかった時代はインクを使っていたそうです)。勿論、試験で鉛筆を使うのはご法度。不正防止ということもあるのでしょう。このような訳ですから鉛筆の出番が非常に少ないのです。文房具メーカーが力を入れないのも頷けます。
こちらで普及しているボールペンはフランス製の4色ボールペン。青、赤、黒、緑が使われています。ビック(Bich)氏が1950年にボールペンを販売開始。ボールペンとは呼ばずに通称「ビック」(BIC)と呼ばれています。ただ、青と赤の減り具合は早いのですが、黒と緑がいつまでも残っているのが困りモノ。中の芯だけ売ってくれれば良いのですが…。
以前、東京大学の学生の内、7割はボールペンでノートを取っているという記事を読んだことがあります。消す時間が勿体無いという意見も有りましたが、自分の思考過程を残すというのが大事なようです。確かに間違えたから消していては、何を間違えたかも分かりません。消すことの出来ないボールペンだと慎重になりますし、頭の中で整理して書く必要があります。これはこちらの教育理念とも合致します。
しかし時代はパソコン。大学生はパソコンでノートを取りますし、最近はタブレットでノートを取る人も増えてきました。消しゴム以上に簡単に消すことのできるこれらの機械を使うようになると、思考回路も変わっていくのでしょうか。頭の柔らかい幼少時代は紙とボールペンであって欲しいものです。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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