白耳義通信 第116回
160年という時間
連載 New! 2026-06-16
今月のベルギーは、いつもより少しだけ特別な空気に包まれています。天皇皇后両陛下がベルギーを公式訪問されるからです。もちろん、ブリュッセルでは各国の首脳や王族が訪れることは珍しくありません。EUの本部がある街ですから、厳重な警備も日常の一部です。それでも、日本から来られると聞くと、どこか嬉しく感じるのは不思議なものです。
今回の訪問には、もう一つ大きな意味があります。2026年は、日本とベルギーが正式な外交関係を結んでから160周年にあたる年なのです。160年と言われても、なかなか実感がわきません。1866年、日本はまだ江戸時代でした。大政奉還が行われる前年です。その頃に結ばれた条約が、今日まで続く日本とベルギーの関係の始まりでした。
ベルギーで暮らしていると、日本とベルギーは遠い国同士のようでいて、意外なほど身近な存在だと感じることがあります。日本企業で働く人、日本から旅行に来る人、日本文化に興味を持つベルギーの人々。普段はあまり意識しませんが、その背景には160年にわたる交流の積み重ねがあるのかもしれません。
日本ではイギリス王室の話題を耳にすることはあっても、ベルギー王室について知る機会はあまりありません。けれど、ベルギーの人々にとって王室は今でも大切な存在です。オランダ語圏とフランス語圏を抱えるこの国において、王室は国を象徴する存在でもあります。
今回の訪問では、王宮での歓迎行事だけでなく、ベルギーが誇る最先端研究機関 imec も訪問される予定です。チョコレートやワッフル、ビールの国というイメージが強いベルギーですが、実は半導体研究では世界の最前線に立っています。
国賓としての訪問に合わせて、ブリュッセル市内では警備も強化されます。王宮周辺や主要な施設の近くでは、普段より多くの警察官の姿を見ることになるでしょう。街の人々にとっても、こうした光景は特別な行事が近づいていることを感じさせます。
160年前、日本とベルギーの人々は、お互いの国についてほとんど知りませんでした。船で何か月もかけて行き来していた時代です。それが今では、飛行機なら半日ほどで行き来でき、世界の反対側の出来事も瞬時に知ることができます。160年という時間は長いようでいて、振り返ればあっという間なのかもしれません。
両陛下の訪問をきっかけに、日本とベルギーの関係について少しだけ思いを巡らせてみる。そんな機会があっても良いのではないでしょうか。
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