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白耳義通信 第115回

静かな日曜日はどこへ行ったのか

連載 2026-05-18

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 ベルギーで暮らしていると、日曜日は静かな日だと感じることがよくあります。

 お店の多くは閉まり、街の中心でさえどこか落ち着いた空気が流れる。日本のようにどこへ行っても開いているという感覚とは、少し違います。けれど最近、その日曜日の風景が、少しずつ変わり始めているように感じます。

 きっかけのひとつは、スーパーの動きです。例えば、Aldi のようなディスカウント系スーパーが、日曜営業を広げようとする動きを見せています。
背景には、共働き世帯の増加や、消費スタイルの変化があります。平日は忙しく、まとめて買い物をする時間が日曜日しかない。そうした生活に合わせて、お店の側も変わろうとしているのでしょう。

さらにベルギーでは、フランチャイズという仕組みもあり、地域や店舗によっては従来のルールにとらわれず営業できるケースもあります。こうした条件が重なり、日曜日も開いている店が少しずつ増えてきました。日本から来た感覚で言えば、便利になったと感じる人も多いと思います。実際、急に何かが必要になった時、日曜日に店が開いているのはありがたいものです。

ただ一方で、少し気になることもあります。もともとベルギーの日曜日は、何もしないことが許される日でもありました。仕事から離れ、家族や自分の時間を過ごす。街全体がゆっくりと呼吸をしているような、そんな一日です。

 もし日曜日が他の曜日と同じように動く日になっていくとしたら、その静けさや、社会全体のリズムのようなものは、少しずつ変わっていくのかもしれません。
また、忘れてはならないのは、そこで働く人たちの存在です。便利さの裏側で、誰かが日曜日に働くことになる。それが当たり前になったとき、社会のバランスはどのように変わるのでしょうか。

 もちろん、時代とともに生活の形が変わるのは自然なことです。日曜日が少しずつ忙しくなることも、ひとつの流れなのかもしれません。けれど、その変化の中で、これまで大切にされてきた静かな一日という感覚を、どこまで残していくのか。便利になることは、確かに悪いことではありません。ただ、その代わりに何が変わっていくのかを、少しだけ立ち止まって考えてみるのも、悪くないのかもしれません。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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