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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海安、円高の圧迫が続く

連載 2018-02-05



マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=190円台前半まで急落した。上海ゴム相場が続落したことに加えて、為替相場の円高基調が維持される中、昨年11月22日以来の安値を更新している。

 上海ゴム相場は1月上旬こそ1トン=1万4,000元台前半で底固く推移していたが、その後は1万3,000元台後半までコアレンジを切り下げ、2月入りしてからは1万3,000元割れを打診する展開になっている。

 1月上旬と足元では、天然ゴム需給環境や見通しに何か大きな変化が生じている訳ではない。寧ろ年初からの中国を含む世界的な株高傾向からは、上海ゴム相場が大きく上昇しても何ら違和感はなかった。しかし、上海ゴム相場はこうした株高の流れに乗れないのみならず、1月最終週に入ってから世界の株式相場が軟化するとそれに連れ安する動きを見せ、昨年11月21日以来の安値を更新している。1週間で5%を超える急落となっているが、専ら投機主導の展開になっている。値下りが投機売りを呼び込む悪循環に陥っている。

 需給面では、産地集荷量は安定している。タイなどはウインタリング(落葉期)に向かうが、現時点では目立った供給量の落ち込みは確認できない。タイ北部では乾燥傾向が強くなっているが、インドネシアやマレーシアの降水量は安定しており、現物需給のタイト感は乏しい。

 実際に国内では昨秋から入庫が急増しており、特に横浜や千葉県などでも在庫積み増し圧力が強くなっている。全国営業生ゴム在庫は、昨年10月10日時点の5,302トンから、今年1月20日時点では1万3,307トンまで急増している。

 一方、昨年から3月末までの期限で生産国が実施している輸出制限については、タイ当局者などから高い合意遵守率が報告されている。ただ、生産国の市況対策を評価して安値是正を進めるような動きは見られなかった。

 産地相場は専ら上海ゴム相場の値動きを追いかけるのみであり、産地主導の価格形成は見送られ続けている。

 2018年は日米欧、中国など主要国の新車販売鈍化が見込まれる中、天然ゴム需給が極端なタイト化状態に陥る可能性は低い。世界的に自動車の買い替え需要が一巡する時期を迎えており、世界経済の成長が加速しても新車向けタイヤ需要が大きく拡大する状況にはない。

 その意味ではゴム相場の上値の重い展開は当然とも言えるが、現在のゴム市場においては必ずしも詳細な需給動向を巡る議論は活発化しておらず、中国投機マネーの瞬間的な動向のみが注目を集めている。

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