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【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER

住友ゴム工業、Equity(公平な機会の提供)も重視ー多様性を高める第一歩として女性活躍の推進に注力

その他 2024-06-04

 住友ゴム工業は、同社のビジョンに基づき多様な属性や考え方を尊重し、すべての個人が能力を発揮でき成果を出せる組織をつくるため、様々な施策に取り組んでいる。中でも女性活躍を、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進において重点課題として位置付けており、「社内で現状最大のマイノリティである女性社員が活躍することが、多様性を高める第一歩だと捉えている」(住友ゴム工業)という。取り組みについて話を聞いた。

ダイバーシティ&インクルージョンに関する図

多様性を高める第一歩として女性活躍を重視

 住友ゴム工業は2020年、企業理念体系「Our Philosophy」を策定。その中で、同社が社会で活動する理由・存在意義であり、あらゆる意思決定・行動の起点であるパーパスを「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」とした。このパーパスを実現するための「ありたい姿」として掲げたビジョン「多様な力をひとつに、共に成長し、変化をのりこえる会社になる。」に基づき、多様な属性や考え方を尊重し、すべての個人が能力を発揮でき成果を出せる組織をつくるため、様々な施策に取り組んでいる。

 その施策の一つであるD&I推進において、「多様性を高め、意思決定に新たな視点や多角的な視点を取り入れることが重要と考えている。“多様性”は様々な価値観、属性を持つ人々が存在することを指すが、当社では特に性別の観点から、社内で現状最大のマイノリティである女性社員の活躍が多様性を高める第一歩と捉えている。もちろん性別だけではなく、国籍や年齢、障がいなど、その他の属性についても並行して考え、組織内においての公平・公正とは何か、常に考え続けられる文化を醸成していく」(住友ゴム工業)。

他社と課題を共有し、視野を広げる

 2024年2月には「第2回 神戸モノづくり企業 技術系女性交流会」を開催した。同社と神戸製鋼所、川崎重工業の3社間で各々の現状や課題を共有する機会となった。

「第2回 神戸モノづくり企業 技術系女性交流会」の様子


 「3社とも神戸でモノづくりをしている製造業だが、女性比率は非常に低く、女性管理職比率も同等に低い状況だ。抱えている課題も同じようなものが多い。1社1社では各課題に対して閉塞感を覚えるが、3社が集まることで、これは当社だけの問題なのか、他社も同じで、さらに言えば日本社会全体の課題なのか等、視野を広げる機会となっている。また、数の少ない技術系女性のロールモデルや仲間と接する機会としても好評を得ている」(同)

 女性管理職比率については、「まずは2025年に7%を目指したい。マイノリティがマジョリティに近くなることで、意思決定の幅が広がる。様々な観点から価値創造が生まれ、ひいては企業力の向上へ繋がっていく。そういった意味では、女性を含むマイノリティ人数を増やすことのみならず、彼らの声をきちんと拾える環境整備が必要だ。また当社内ではマジョリティとされる男性社員の中でも、自身の強みを発揮しきれていない層が埋もれず活躍できるよう、強みや自分らしさを発揮できるインクルーシブな環境にしていくことが、最終的に企業の価値・強さへ繋がっていくと考えている」(同)。

公平な機会の提供にも注力

 企業の価値・強さを発揮するためのステップの一つとして、同社は2024年4月、D&Iへの取り組みをより強力に推進すべく、人事部内に設置した専任組織「D&Iグループ」をサステナビリティ経営推進本部内の「DE&Iグループ」とし組織再編を行った。「E」は「Equity」の頭文字で、「公平な機会の提供」という意味を持つ。一人ひとりの違いや状況に配慮して支援を提供し、公平になる環境を整備することで、多様性と包摂性のある組織作りを目指す。

山本悟社長と女性部長らによる対話会の様子


 「DE&Iをサステナビリティ経営の一つのアイテムとして取り組んでいかなければならないと考え、再編に至った。『Equity』の視点でも各施策を進める必要がある」(同)

アンコンシャスバイアスを会社としての共通言語に

 DE&I推進にあたり、立場や属性が異なる他者への共感力や理解力は不可欠となる。そこで同社ではアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)を理解し、自己の言動を意識して見つめなおす活動を2019年から継続的に展開。誰にでも他者や自身に対し無意識の思い込みがあると気付くことで、多様性を受け入れ育む風土を醸成している。

 「例えば、育休明けの社員に対し、上司が『きっと子育てで大変だろう』と大きな責任が伴う仕事の機会を与えないとする。社員自身がそれを望んでいればいいが、『本当はもっと責任のある仕事をしてみたい。でも育休明けの今の自分では無理だろう』と意思を抑えて上司の気遣いに応じてしまう。これだと成長機会の損失に繋がる。このようなバイアスへの気づきは、多様な人材が活躍できる組織作りの土台となる」(同)

 またトップによるコミットメントも非常に重要だ。同社は社長以下役員との勉強会や対話の機会を積極的に設けている。「当社の良いところの一つは、社長をはじめとする経営層が『DE&I』について自身の言葉で語れるところだ」(同)。

 一方で、「推進活動のキーパーソンは、若手社員と経営層のつなぎ役でもあるミドル層だが、この層が積極的にDE&Iを推進することが今後の課題と言える」(同)。

『お互い様だ』と思える社内風土の醸成

 DE&I推進には、アンコンシャスバイアスについての啓蒙や勉強会など、成果が出るまで長期的かつ戦略的に取り組む必要がある一方、制度の充実を図ることも求められる。

 「もし社員が自身のキャリア・ライフプランを考えた時に不安を感じることがあれば、それは当社の制度が不十分だということ。彼らに安心して生き生きと働いてもらうため、究極は一人ひとりに向き合うべきだが、一足飛びに制度や風土を個々にフォーカスするのは難しい。まずは最重要課題として、当社最大のマイノリティである女性社員の活躍を力強く進めていく。

 また制度からこぼれ落ちてしまう部分は、組織でコミュニケーションをとりながら補完していく。例えば、性別関係なく育休や介護などが起こりうる。その時に『お互い様だ』と思える社内風土の醸成が非常に大事だと思う。それが企業自体の魅力にも繋がっていくのではないか」(同)

 同社は公平な機会の提供への取り組みの継続とともに、個人の成長、ひいては企業価値の向上に繋がるDE&Iを強力に推進していく。

蛭田晋一郎人事部長(左)、宮城ゆき乃サステナビリティ推進部長



 ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。

 ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。

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