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【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER

日東化工、再生材料化、再製品化への役割が期待される-既存製品を活かし、グループ企業とサーキュラーエコノミーを目指す

その他 2023-10-10

 日東化工は2023年3月、エンビプロ・ホールディングスのTOB(株式公開買い付け)で、同社のグループ企業となった。サーキュラーエコノミー(CE)の取り組みを推進するエンビプロ・ホールディングスにとって、日東化工は特に廃タイヤや廃プラスチックの再生材料化、再製品化への役割が期待されている。これまで日東化工では、ゴム製クッション材「ブラックターフ」や「クッションマット」などで、再製品化の技術を培ってきた。それを活かし、CEの取り組みに貢献していく。

成田空港第3(LCC専用)ターミナルに採用された「クッションマットコーティング」


 

サーキュラーエコノミー実現を推進

 日東化工のエンビプログループへの参画には、エンビプロ・ホールディングスの子会社で、従来から取引のあった東洋ゴムチップが関係している。日東化工は東洋ゴムチップから、ゴム製クッション材やマット製品の原材料となる廃タイヤをリサイクルしたゴム粉を仕入れていた。エンビプロ・ホールディングスは自社が掲げるサーキュラーエコノミー(CE)の実現に向け、同社と東洋ゴムチップ、日東化工の相乗効果をより強固なものとするため、日東化工をグループに組み入れた。

 エンビプログループに参画したことで、日東化工は“再生”という領域で、これまで以上に社会に貢献していくことがミッションとなる。
 

日東化工の役割

 日東化工に期待されるのが、廃タイヤや廃プラスチックの再生材料化と再製品化の領域だ。「グループ企業になる以前は、CEと事業が上手く繋がっていなかった。ただ今回を機に学び、日東化工のこれまでを振り返ってみると、当社は従来からCEに取り組んでいたと実感した」(日東化工)。

ブラックターフ


クッションマット


 同社が40年前から販売している高耐久リサイクルゴムマット「ブラックターフ」は、「架橋剤を全体の2%ほど入れているが、残りの98%は廃タイヤのトレッド部からリサイクルしたゴム粉を用いている。販売当初から“エコ商品”として実績を持ち、市場にも認知されてきた。リサイクル素材を提供してもらい、当社が製品化し、市場に戻す。廃タイヤの再生材料化、再製品化の実績は既にあった」(同)。

 優れた透水性能とクッション性能を持ち合わせた長尺透水性のゴムマット「クッションマット」も同様に、リサイクル素材を再製品化したものだ。同製品を表面強化した「クッションマットコーティング」は、例えば2015年に成田空港第3(LCC専用)ターミナルに採用されており、広く社会に貢献している。

 リサイクルしたゴム粉を用いたこれら製品を、再び回収、粉砕し、再製品化する――というのが理想だ。しかし製品としての100%リサイクルはまだ難しいため、エンビプログループ内で、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、エネルギー回収(サーマルリサイクル)の3つの手法を組み合わせ、最適な循環モデルの構築を目指していく。

 「まずは素材に戻し、製品化するまでが、目下、日東化工の主な役割になる」(同)

 現在、東洋ゴムチップが脱硫したEPDM製のゴムチップの粉体を、日東化工がコンパウンドし、再生ゴムシートとして市場に戻すといった取り組みを試行しており、最終段階に来ている。「だが、バージンのEPDMが持つ特性まで戻せるかというと、そこまでは届かないので、現状ではゴムシート以外の製品に転用せざるを得ない。高品質化を数年かけて目指していく」(同)。

 また、設備投資も課題に挙がる。現状リサイクルにゴム粉として用いるには、例えばタイヤのトレッド部のようにゴム単体で構成されていないと粉体化が非常に難しい。ただゴム製品は、ゴムと金属などの複合体が多い。それらをゴムと金属、ゴムと他素材といった具合に分別する作業と設備が必要となり、素材に合わせて一つひとつ揃えていかなければならない。
 

ポリマーサーキュラーラボ

 日東化工は社内に、ポリマーサキュラーラボという組織を設立。CEに関する問い合わせに幅広く応えていく体制を整えた。「メンバーには、営業、技術職それぞれが所属しており、顧客が困っているCEに関する課題を解決していく。2023年末には、専用サイトも開設予定だ」(同)。この活動を通して、日東化工がエンビプログループ全体のゴムや樹脂に関する窓口として機能することが期待されている。
 

サーキュラーエコノミーとカーボンニュートラルの同時達成

 エンビプロ・ホールディングスは2018年から、使用電力を全て再生可能エネルギーで運営する事にコミットメントする「RE100」に加盟している。日東化工も本社工場の電力を100%再生可能エネルギーに切り替えていく。これにより低CO2で製品を製造する事が可能となり、CEとカーボンニュートラルを同時に達成していく事を目指していく。
 

スピード感を持って取り組む

 「これまで廃棄していたものを、それぞれの素材や用途に応じて分別し、それらを素材に戻すとビジネスになる。エンビプロ・ホールディングスでは廃棄物を扱うだけではなく、それを再生材料化、再製品化し、再び社会に循環させるCEを目指しているが、日東化工も昔から取り組んでいたので感覚として分かっているつもりだ。当社としても、これまで一工程にすぎなかったことが、大きな事業になっていく面白さがあると感じている。

 現状、当社の売上高は40億円ほどだが、それを2030年くらいには100億円に高め、その半分を環境製品が占めることをイメージしている。2030年はあっという間にやって来るので、極力早く対応していく。エンビプログループで協働しながら推進していきたい」(同)

 40年前から販売する製品は、実はCEの一翼を担っていた。同グループに参画し、それを改めて認識した日東化工は、同グループが掲げるCEの実現とともに、社会への貢献をさらに深めていく。

営業部長 石崎和久氏


ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。

 ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。

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