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【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER

住友ゴム工業、サステナブルリング×データリングで新たな価値創出-「TOWANOWA」で描くタイヤ事業のサーキュラーエコノミー実現

その他 2023-09-25

 2023年3月、タイヤ事業におけるサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を発表した住友ゴム工業。「サステナブルリング」と「データリング」という2つの輪が密接に繋がることで、資源循環の促進とCO2削減、安全かつ高機能なタイヤ開発、高効率な物流体制の構築など、顧客への新たな価値提供を目指す。同構想を指針に、次世代モビリティ社会をはじめとした持続可能で安全、安心、快適な社会の実現に貢献していく。

タイヤ事業におけるサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA」

「TOWANOWA」のキービジュアル


 「TOWANOWA」の名前には、持続可能な未来とモビリティ社会が永遠に続く、永遠(TOWA)の発展を支える2つの輪(WA)という意味が込められている。

 2つの輪とは、タイヤ事業のモノの流れと資源循環を目指す「サステナブルリング」と、ビッグデータやシミュレーション技術などから成る「データリング」を指す。これらを掛け合わせ活用することで、顧客への新たな価値提供を目指す。

 「サステナブルリング」ではタイヤ事業のモノの流れを5つのプロセス--①企画・設計②材料開発・調達③生産・物流④販売・使用⑤回収・リサイクルで循環させ、資源の無駄を排除しサーキュラーエコノミーの実現を目指す。

 一方の「データリング」では、バリューチェーン上の各プロセスから収集した、例えば原材料のデータやタイヤの使用データといったビッグデータを連携。それにより同社の強みであるシミュレーション技術、AI技術の更なる進化を図る。ビッグデータの収集には、独自のセンシング技術「センシングコア」を活用。これらをタイヤ設計や材料開発、使用段階などの各プロセスで利用し、新たな価値を生み出していく。

 センシングコアの機能には①タイヤ空気圧②路面状態③タイヤ摩耗④タイヤ荷重の4つの情報検知がある。更に、「第5の機能として、車輪脱落予兆検知の実装を目指し、自動車メーカーに提案している」(住友ゴム工業)。今後も機能拡張を推進し、予防保全的アプローチで長寿命なタイヤづくりへ貢献する。

 「TOWANOWAの肝は、やはりタイヤを回収し新しいタイヤに生まれ変わらせるプロセスを繋げていくということ。また、顧客にタイヤを売って終わる従来のリニア型ではなく、使用段階で安心安全に貢献できるかも大きなポイントだ。プロセス実現のため、当社のシミュレーション技術を活かす」(同)

水素エネルギーを活用しカーボンニュートラルタイヤを生産

水素ボイラー


 TOWANOWAに付随する取り組みの1つに、水素エネルギーを活用したタイヤ製造がある。同社白河工場では2021年8月から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、水素エネルギーを活用したタイヤ製造の実証実験を行っており、まず水素ボイラーの運用、安全性、安定稼働の確認を進めてきた。これはプロセス③生産・物流に該当する。

カーボンニュートラルタイヤ(ファルケンブランド「AZENIS FK520」)


 タイヤの高精度メタルコア製造システム「NEO-T01」の加硫工程で、必要とする高温、高圧の蒸気を熱源として、従来の天然ガスから水素へと燃料転換を図った。「NEO-T01」では、水素ボイラーと同工場内での太陽光発電によって、2023年1月から製造時(Scope1、2)におけるカーボンニュートラルタイヤ(ファルケンブランド「AZENIS FK520」)の生産を行っている。

2024年アクティブトレッド搭載の次世代オールシーズンタイヤを商品化

「SMART TYRE CONCEPT」の核となる5つの方向性


 同社は2017年、タイヤ技術開発コンセプト「SMART TYRE CONCEPT」を発表。センシングコア、アクティブトレッド、性能持続技術、エアレスタイヤ、LCA(ライフサイクルアセスメント)の5つの技術を核に、走行状態の感知や、性能の維持など、環境に寄与する“賢い”タイヤの完成を目指してきた。

 同社は2024年、コア技術の一つアクティブトレッドを搭載した次世代オールシーズンタイヤを商品化する。

 アクティブトレッドは、ドライ路面やウエット路面、雪上路面といった、天候の変化による様々な路面状況に応じて、トレッドが最適な性能にスイッチする、同社独自で特許出願中のゴム技術だ。

 これはプロセス④販売・使用に該当するもの。センシングコアなどデータを活用したビジネスモデルの構築と、高い安全技術を搭載したタイヤの提案を融合させることで、顧客に最適なタイヤを提案する。

ゴミを一切出さずにタイヤを作り続けられる未来を

 TOWANOWAが描く究極の理想は、「ゴミを一切出さずにタイヤを作り続ける未来」だ。その実現に向けては、「やはり産官学の連携がないと厳しい。国単位で取り組むことも非常に重要だと思う」(同)。TOWANOWAで描く理想--タイヤ事業のサーキュラーエコノミーの実現を目指し、着実に歩みを進めていく。

サステナビリティ経営推進本部サーキュラーエコノミー推進部 永瀬隆行課長(左)、阿部頌太朗課長(右)


 ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。

 ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。

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