ブリヂストンは4月9日から6月16日まで、ブリヂストンイノベーションギャラリー(東京都小平市)で企画展「EVERTIRE INITIATIVE展」を開催した。

 テーマは「使い終わったタイヤを、新しいタイヤに生まれ変わらせる」。

 タイヤの水平リサイクル技術だけでなく、その必要性や社会との共創の重要性を一般来場者にもわかりやすく伝え、「タイヤが循環する社会」について考えるきっかけづくりを目指した。

企画展全体の様子

 同社が推進する「EVERTIRE INITIATIVE」は、使用済タイヤ(廃タイヤ)を新たなタイヤの原材料へ戻し、再びタイヤとして循環させる「タイヤの水平リサイクル」の実現を目指す活動。

 日本では使用済タイヤの再利用率は99.6%に達するものの、その約85%は燃料として利用され、CO2排出を伴うサーマルリサイクルとなっている。同社はここからさらに一歩進め、タイヤを資源として循環させる取り組みを進めている。

 展示では、「なぜタイヤを資源として捉えるのか」「水平リサイクルとは何か」「なぜ実現が難しいのか」といった背景から順を追って理解できる構成とした。

 会場中央には、精密熱分解によるケミカルリサイクルを紹介する大型の立体展示を設置。

 使用済タイヤを細かく砕いたタイヤチップを精密熱分解し、タイヤ分解油や再生カーボンブラックを回収。それらを化石資源由来の新品原材料と同等品質の原材料へ再資源化し、新たなタイヤへ循環させるプロセスを立体的に紹介した。

精密熱分解技術によるケミカルリサイクルの流れを紹介した立体展示

 タイヤ由来のリサイクルブタジエンゴムや、昨年10月の「Japan Mobility Show」で公開した世界初のコンセプトタイヤも展示し、「タイヤからタイヤへ」の循環を実物で示した。

リサイクルブタジエンゴム

 技術だけでなく、「伝え方」にも工夫を凝らした。タイヤの構造や水平リサイクルの難しさは、「様々な具材を混ぜ合わせて焼き上げたお好み焼きを、もう一度材料に戻そうとしているようなもの」と例えて説明。専門知識がなくてもイメージしやすい表現とした。

 また、「ブリヂストン2026年漫画カレンダー」では初めて同プロジェクトが題材に採用された。イラストはアニメーション映画監督・米林宏昌氏が手掛け、そのラフなども展示。小学生を含む幅広い世代に理解してもらえるよう工夫した。

実現へ「コスト低減」に関心

 来場者参加型のアンケートも実施した。

 「ブリヂストンがタイヤの水平リサイクルに取り組んでいることを知っているか」「環境に配慮したタイヤを購入したいと思うか」「循環型社会の実現に必要なことは何か」といった設問を設け、シールを貼って回答する形式を採用。

 一般来場者、ビジネスパートナー、同社社員でシールの色を分けることで、立場ごとの意識の違いも把握できるようにした。来場者自身がシールを貼る体験を通じて、展示内容を「自分ごと」として考えてもらう狙いも込めた。

来場者参加型のアンケート

 同社では昨年出展したサーキュラーエコノミーエキスポでも同様のアンケートを実施しており、今回との比較から意識の変化も見えてきたという。

 「環境に配慮したタイヤを購入したい」と回答する来場者は多く、環境配慮型商品の受容性の高まりがうかがえた。一方、循環型社会の実現に必要なこととしては、今回は「コスト低減」を挙げる回答が最も多かった。

 サーキュラーエコノミーエキスポでは「規制・ルールづくり」が最多であり、来場者層の違いによって課題認識にも変化が見られた。

 同社では、こうした反応を継続的に収集・分析し、「何が伝わり、何がまだ伝わっていないのか」を検証しながら、展示内容や情報発信の改善に繋げていく考えだ。

 展示空間全体を彩るグラデーションにも、「社会も、人も、企業も変わっていく」という思いを込めた。

 「サステナブルな商品やリサイクル材に価値を感じる人は確実に増えている。一方で、私たち一人ひとり、一社だけでは社会を変えられない。だからこそ競争ではなく共創という考え方を大切にし、『未来へ一緒に行こう』というメッセージを込めた。まずは知っていただき、興味を持ち、自分ごととして考えていただくことが重要だ。そこから共創の輪が広がり、タイヤが循環する社会の実現に繋がっていく」(ブリヂストン)

(左から)加藤貞治リサイクル事業準備室長、北野秀樹リサイクル事業開発推進部長

 展示全体を通して伝えたかったのは、技術の優位性だけではない。タイヤの水平リサイクルを社会全体で実現するためには、多くの人の理解と参加が不可欠であるというメッセージそのものだった。

 同社は今後も展示やイベントを通じて、タイヤの水平リサイクルの認知拡大と共創の輪を広げ、循環型社会の実現を目指していく考えだ。

 なお7月1日から、ブリヂストンイノベーションギャラリー内の常設展示でも「EVERTIRE INITIATIVE」の取り組みについての紹介を開始している。