液晶ディスプレイ産業発展への寄与が評価
日本ゼオン、位相差フィルム開発で大河内記念技術賞を受賞
原材料 2019-02-20
日本ゼオンは2月14日、液晶ディスプレイ用位相差フィルムの生産技術開発による産業発展への功績が評価され、大河内記念会(理事長:吉川弘之博士)から「第65回(平成30年度)大河内記念技術賞」を受賞することが決定したと発表した。3月26日に日本工業倶楽部(東京都・千代田区)で開催される贈賞式で表彰される予定。
日本ゼオンが開発した液晶ディスプレイ用位相差フィルム(製品名:ゼオノアフィルム)は、独自のポリマー設計技術で開発した熱可塑性プラスチック(シクロオレフィンポリマー)を原料とする光学用フィルム。主に位相差フィルムや偏光板保護フィルムなど、偏光板の部材として使用されている。
今回の評価対象となったのは、日本ゼオン独自の加工技術でシクロオレフィンポリマーをフィルム化する「溶融押出法」と、フィルムの分子を一定方向に配向させる「逐次2軸延伸」、「斜め延伸」などの延伸技術。
光学用フィルムは厚み精度への要求が一般のフィルムと比較して厳しく、従来は溶液キャスト法によって製造されてきたが、同製法は厚み精度に優れるものの、生産性を上げることが難しく、設備も大規模なものが必要とされ、これが光学用フィルムの高コストの要因となっていた。
日本ゼオンでは生産性向上と設備のコンパクト化を目指し、溶融押出法の開発に着手。溶融押し出しで溶液キャスト並みの厚み精度を達成することは業界では長年の間、実現不可能と言われてきたが、溶液キャストを凌駕する厚み精度を得ることに成功した。それにより、品質は同等以上で圧倒的なコスト競争力を持つフィルムの生産が可能となった。
溶融押し出しで製膜されたフィルム(原反フィルムあるいは未延伸フィルムと呼ばれる)は分子の向きがランダムの状態で、これを延伸させることにより分子が一定方向に配向される。大型液晶ディスプレイ用の視野角を拡大するためには、業界初のプロセスとして縦と横に段階的に延伸させる「逐次2軸延伸」、スマートフォンなどの中小型ディスプレイには世界初のプロセスとして任意の角度に分子を配向させる「斜め延伸」の技術が用いられている。膜厚や分子配向、光学物性などの制御には多くの課題があったが、日本ゼオンが開発した新たな製法は諸性状の制御を可能にした。
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