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岡本美保経営基盤本部ESG推進部部長に聞く

TOYO TIRE 経営基盤本部ESG推進部/サステナビリティ活動―価値ある製品・サービスの創出に軸をぶらすことなく推進へ

タイヤ 2024-12-16

 TOYO TIREは2021年4月、サステナビリティ経営を強化・推進していくことを企図して清水隆史社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置。事業戦略とサステナビリティの融合を図り、事業を通じて社会価値の創出をめざしている。経営基盤本部の岡本美保ESG推進部部長は取り組みを振り返り、「2021年に目標を立てて丸3年。委員長である清水社長のリーダーシップのもとPDCAサイクルを繰り返し、確実に前進してきた。環境規制やサステナブル原材料など新たな与件も発現するなか、価値ある製品・サービスを創出するメーカーとして軸をぶらすことなく推進していく」と語る。岡本部長に現状を聞いた。

(左から)吉井氏 岡本部長 田中氏 酒井氏


 ■目標と計画からの成果
 2021年、中期経営計画「中計’21」のスタートとともにサステナビリティ委員会を設置し、3年の活動を重ねた。TOYO TIREは優先して取り組むべき重要課題を7項目に特定。マテリアリティとして明確化し、価値創出領域・価値創出を支える基盤領域・リスクマネジメント領域の3つに分けて掲げている。マテリアリティにひもづくそれぞれの活動テーマを各機能組織の事業計画に落とし込み、その進捗状況をモニタリング、管理するというしくみをつくり、そのサイクルが定着してきた。取り組み目標のなかには、製品発売やCO2削減など、具体的に数字として見える成果も出てきている。

 SDGsは2030年をゴールとした目標のため、あと5、6年後への意識を高めなければならない。1年の成果を短期的に細かく点検しながらも、2030年を見据えて長期スパンでの変化与件や課題を見ている。環境規制など、社会的にスピーディーに動く事象もある。当初の目標計画をこのまま推進して2030年のゴールを達成できるのか、成果が出せるのか、定期的に見直しつつ、世界の動きのスピードに合わせてブラッシュアップしていくことが必要だ。

 サステナビリティに関する動向は常にチェックし、新しい規制などにはきちんと対応していくが、TOYO TIREの事業活動による環境・社会インパクトも勘案して、会社としての軸をしっかり持ってぶれないようにする。SDGsのゴールをめざす過程では、課題を解決しながら目標達成に取り組むことが大切になる。

 ■サステナブル原材料についての考え方
 サステナブル原材料使用比率の向上に関しては、マテリアリティの中で、2030年に40%、2050年には100%達成を目指すという目標を掲げるなかで、2023年時点では26%まで到達した。現状では、サステナブル原材料の採用によるコスト上昇は不可避なため、どの製品にサステナブル原材料を採用して付加価値化していくのか、財務インパクトやTOYO TIREの事業の強みなどもふまえて、長期的な視点で製品を企画・計画していく必要があると考えている。サステナビリティ委員会でもその計画・目標進捗を確認していくようにしている。

 TOYO TIREのマテリアリティは前述の通り、製品・サービスを通じて価値を創出していく領域、それを支える基盤の領域、リスクマネジメントの領域の3つに層別している。サステナブル原材料の使用拡大は、このうち価値創出を支える基盤の領域に属する。

 マテリアリティの取り組みに優先順位はないが、メーカーとしての使命を果たすためには、価値ある製品・サービスをいかに提供していくかが重要であり、そのために相応のリソースをかけてリスク対応していく方針だ。

サステナビリティ活動を社内に浸透させる施策

 TOYO TIREの強みは独自性にある。「タイヤなどの製品・サービスだけではなく、例えばオフィス環境を従来にとらわれず改装したり、服装を自由化したりといった日常の社内職場環境や従業員の多様性重視にあらわれているように、TOYO TIREは独自性を育む企業であるということを経営トップが折に触れて発信しており、従業員自らも意識していくことは肝要だ」(岡本部長)。

 サステナビリティ活動の社内浸透も、多面性を持ったアプローチで実施している。

 「浸透活動は、全従業員が同じスタートラインから一斉にレベルを上げていくという取り組み方ではなく、属する機能組織によって課題も異なるため、そうしたことを配慮したアプローチが必要だと考えている」(同)。

 現在、「階層別」と「機能別」でアプローチしており、機能別は主に「生産拠点」と「若手技術者」を対象に、それぞれ形式や内容を変えてサステナビリティの浸透を図っている。

 ■サステナビリティ活動の最前線「生産拠点」へアプローチ
 TOYO TIREの生産拠点を中心に、生産活動に携わる従業員を対象にした浸透活動については、「2020年の10月ごろから、サステナビリティに関わる情報共有を核に何か現場に対してアプローチできないかと考えていた」(経営基盤本部ESG推進部 田中由似さん)。

 「労働組合の協力も得て、朝礼や小集団活動で展開できる教育資料の作成に取りかかった。サステナビリティをわかりやすく身近に感じられ、“自分ごと化”できるコンテンツを意識して、実際の展開シーンを想像しながらコミュニケーションツールを制作した。第1弾は2023年4月の配信。その後、作業長など情報展開に携わる従業員へもヒアリングを行い、実際に使ってみた感想を採り入れて改善を重ね、隔月で1年間ツールの配信を続けた」(同)。

 さらに隔月で発刊されている社内報も積極的に活用した。「社内報のなかにサステナビリティのコーナーを設けている。2023年は、6拠点での浸透活動を通年テーマとして取り上げた。連載初回の取材に同行し、桑名工場での課の朝礼を見学した。実際にツールを展開する際、係長や作業長が資料に創意工夫を加え、説明している場面を見て、こんな風に使ってもらえているんだと実感した。ラインで働いている従業員は、CO2排出量の削減や水資源の保全など、サステナビリティ活動を最前線で取り組んでいる。自分たちが日々頑張っていること、業務として取り組んでいることが社会をより良くしていくことに直結していることと気づいてもらえるように工夫した」(同)と言う。

 ■「階層別」では、グループディスカッションで新たな気づきを
 「主幹・次席などの階層別に研修を行っている。環境面・社会面において、グローバルレベルで起こっていること、またこれから起こると予測されていることを紹介しつつ、それを受けるかたちでTOYO TIREのサステナビティやマテリアリティの取り組みを説明。研修はグループワークをメインに据えている。自身の業務または自部門でマテリアリティに関連して取り組んでいること、実践していること、中長期的に取り組んでいかなければならないことなどを自分で考え、グル-プディスカッションを行なっている」(同部吉井宏彰さん)。

 「できるだけ異なる部門の従業員が集まり、意見交換できるようにしている。他部門の取り組みを知ることでさまざまな気づきや発見を感じてもらいたい。研修終了後もサステナビリティへの意識を継続して持ってもらえることが課題だ」(同)。

 ■「技術者」は教育カリキュラムの一環で研修
 技術部門の若手従業員には「タイヤの構造設計」や「タイヤの評価方法」、「配合設計」などを学ぶ、基礎教育カリキュラムが用意されている。「カリキュラムの中級コースで、技術者のためのSDGsセミナーを設定している。30歳前後の若手技術者を対象に、TOYO TIREのマテリアリティをはじめ、カーボンニュートラルやサステナビリティ原材料といったサステナビリティの取り組みを説明している。受講者にはワークに取り組んでもらうが、日々新しい素材や技術に触れる若手技術者が“自分ごと化”できるよう、2050年のTOYO TIREのあるべき姿など、将来の予測をテーマに設定している」(同部酒井秀之さん)。

 「現在と将来の間にギャップがあるとしたらそのギャップは何か、ギャップを埋めるとしたら何をしたらよいかなどを考えてもらいたい。サステナビリティの取り組みを推進していく当事者としてそれぞれが目標を持って、これからのTOYO TIREを背負っていってもらえたらと思う」(同)。

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