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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海主導で急伸も材料なし

連載 2017-07-24

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=200円の節目を挟んでの保ち合い相場を経て、210円台まで急伸する展開になった。需給面には特段の新規材料は見当たらないが、上海ゴム相場が突然に急伸地合を形成したことで、東京ゴム相場もつれ高する展開になっている。概ね5月下旬以来の高値圏まで上昇している。

 上海ゴム相場は1トン=1万3,000元台で方向性に乏しい展開が続いていたが、突然に1万4,000元台に乗せた。6月29日の直近高値を上抜いたことで、チャート主導の買い圧力が強まり、踏み上げ相場の様相を呈している。ボックス相場が長期化していただけに、改めて戻り高値を更新する動きが、投機売りに対してポジション整理を誘っている模様だ。

 材料としては、4―6月期の中国国内総生産(GDP)が前期比年率6.9%増となり、1―3月期に続いて政府成長目標を上回ったことはポジティブである。ただ、この統計を受けてのゴム相場の反応は限定されており、中国の天然ゴム需要拡大期待というよりも、単純な投機要因に基づく上昇圧力との理解で十分だろう。

 中国コモディティ市場では、鉄鉱石や石炭なども天然ゴム相場と歩調を合わせる形で急伸しており、各コモディティの個別需給動向に関係なく投機買いが膨らんだことが強く窺える状況にある。

 一方、生産地の集荷環境は良好である。イスラム系農民がラマダン明けの活動を活発化させている一方、産地気象環境は適度の降雨が観測される理想的な状況にある。実際に天然ゴムと生産地が重複するパーム油相場は上値の重い展開だ。

 生産国ではゴム相場の低迷に強い危機感が示されており、マレーシアのプランテーション相からは9月にも輸出制限を行う案を検討していることが明らかにされている。しかし、実際に他国間合意が実現し、それが着実に履行されるのかは極めて高いレベルの不透明感があり、生産国の介入による天然ゴム需給の引き締まりシナリオを織り込むような動きは限定されている。

 なんら目立った材料がない中で上海ゴム相場は上昇しただけに、突然に意味なく反落しても当然との割り切りは必要である。あくまでも中国投機筋の瞬間的な投資判断に左右される相場環境である。ただ、チャート上では上海ゴム相場が明確な戻り高値更新サイクルに突入している以上、弱気筋のポジション調整が更に促された場合には、一気に1万5,000元水準を打診する可能性も浮上している。上海ゴム相場の投機動向に一喜一憂する相場展開が続こう。
 (マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努)

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