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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、当限は軟調も決め手難

連載 2017-07-21

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=200円の節目を挟んで揉み合う展開。

 7月4日の取引で突然に上海ゴム相場が急落したことを受けて190円台中盤で上値の重い展開が続いていたが、12日の取引ではその上海ゴム相場が急伸に転じたことで200円台を回復するなど、明確な方向性を打ち出せなかった。出来高も極度に落ち込んでおり、値動きの鈍さに加えて相場ロジックの分かり辛さから、積極的な売買は見送られていることが窺える。

 比較的明確なトレンドが形成されているのが当限であり、こちらは6月21日以来となる約3週間ぶりの安値を更新している。生産地の集荷環境が安定化していることもあり、産地主導で上値の重い展開が続いている。

 東南アジアでは総じて安定した降水量が確保されており、農産物生産環境全体が好調である。ラマダン明けでイスラム系農家の動きも活発化しており、当限の値下がりは当然とも言える。しかし、期先限月では生産コストの限界を警戒する声も強く、当限の軟調地合に連動して下落することが拒否されている。

 何か具体的な市況対策の動きが出てきている訳ではないが、タイ南部では農家の抗議活動が活発化しており、首相に対して特別措置を講じることが要請されている。実際に、プラユット・チャンオチャ首相もゴム相場の低迷問題に懸念を表明しており、いつ生産国が市況対策を発表しても不思議ではないとの警戒感が広がっている。

 この結果、当先の鞘バランスは順鞘(期近安・期先高)方向への歪みを見せている。本来であれば11月や12月は年間で最も産出量が増える増産期に当たるため、当限に対して期先にプレミアムを加算する必要性は乏しい。しかし、政策介入の可能性の一点が、期先限月を刺激している。

 中国コモディティ市場では、鉄鉱石や石炭相場などが総じて底固く推移しているが、明確な上昇トレンドを形成するまでの勢いはない。経済指標が総じて強めの数値になっていること、金融政策の引き締め圧力が一服していることなどが、コモディティ市況全体をサポートしている。ただ、政策の軸足が引き締め方向にあることには変わりなく、改めてコモディティ・バブル的な急伸地合を形成するような勢いは確認できない。

 引き続き良好な供給環境が期近の上値を圧迫する一方、コスト限界への警戒感が期先をサポートする、方向性に乏しい展開が続き易い状況になっている。材料待ちの時間帯になろう。

 (マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努)

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