【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、自立反発も上げ幅は限定的
連載 2025-06-16
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=280.00円で下げ止まった後の修正高で300円台を回復した後、再び290円水準まで軟化する不安定な地合になった。米中通商環境の改善期待が浮上していることはポジティブだが、根強い需要不安、季節的な増産圧力に対する警戒感も強く、明確な方向性を打ち出せなかった。為替相場も1ドル=143~145円水準で方向性を欠いた。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台後半まで小幅上昇する展開になった。6月4日の1万3,295元で下げ一服となった後の修正高になった。
6月9日と10日に米国と中国の閣僚級通商協議が行われ、両国が5月の協議で合意した内容を実行に移すための枠組みで一致した。米国による先端技術の輸出規制、中国によるレアアース輸出規制について、ともに見直しが約束された模様だが、詳細は明らかになっていない。
ここ数カ月は、中国のレアアース輸出規制が各国の自動車生産体制に混乱をもたらしていただけに、実際にレアアース供給が安定化すると、新車用タイヤ向けのゴム需要環境も安定化しやすくなることはポジティブ。
中国の5月新車販売台数は前年同月比11.2%増の268万6,000台になった。政府の買い替え補助金に加えて、BYDを端緒に各社が値引き競争に踏み切ったことが、電気自動車(EV)を中心に需要を刺激した模様だ。ただし、世界的な自動車市場の減速懸念は根強く、ゴム相場は下げ一服となったものの、反発力は限定された。
日本の法人企業景気予測調査によると、自動車・同部品の現状判断指数は▲16.1%となり、1~3月期の+8.8%から大きく落ち込んだ。2025年度通期の売上高は▲10.7%、経常利益は▲19.8%が見込まれていることはネガティブ。
米中通商環境の改善期待に下値を支えられながら、自立反発の域を脱するような値動きには発展しなかった。6月12日には、トランプ米大統領が「今後1週間半から2週間以内」に、各国・地域に関税率を設定して書簡を送付すると発言している。4月に発表された上乗せ関税の期限が切れる7月9日を前に、改めて通商環境が不安定化するリスクが高まっていることはネガティブ。
産地相場は下げ一服となっている。季節的には増産圧力が強まりやすい環境だが、価格に関しては消費地相場と連動している。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、6月12日時点で前週比4.5%高の1キロ=68.88バーツとなっている。供給環境の動向よりも需要リスク評価が重視されていることが再確認できる。
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