【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、通商環境改善で急伸地合に
連載 2025-05-19
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=310円台後半まで値上がりし、4月7日以来の高値を更新した。通商環境の改善を受けて、投資家のリスク選好性が高まった。株高、円安環境の支援もあり、300円の節目回復から5月15日には320.50円まで切り返す展開になった。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万5,000元台前半まで小幅上昇する展開。通商環境の改善期待が強まる中でも1万4,000元台後半での小動きが続いていたが、1万5,000元の節目を上抜く展開になった。最近の取引レンジ内での値動きだが、価格水準が切り上がったことはポジティブ。
引き続き通商環境に対する関心が高いが、5月に入ってからはポジティブな評価が優勢。5月8日に米英が貿易協定を締結したのに続き、12日には米中両国が関税の大幅引き下げで合意した。
米中政府高官は10~11日にスイスで協議を行ったが、互いに関税を115%引き下げることで合意した。米国の対中関税は145%から30%、中国の対米関税は125%から10%まで、それぞれ引き下げられることになる。90日が協議の期間に設定され、両国は貿易協定締結を目指すことになる。実際に早期に合意に達することができるのかは不透明感も強いが、初回協議で一気に115%もの関税引き下げで合意できたことには、サプライズ感が強かった。これによって世界経済の減速懸念は緩和され、投資家のリスク選好性が高まったことがゴム相場の値上がりに直結した。原油や非鉄金属など、ほかの産業用素材市況もやや強含む展開になっている。
一方、世界の主要株価指数は、トランプ米大統領が相互関税を発動する前の水準を上回り始めている。このため、株価急伸が一服し始めると、ゴム相場も320円水準で上げ一服となっている。マーケットの関心が通商問題に集中している以上、このまま通商リスク軽減に向かうのか、新たな混乱が発生するのかが焦点になる。
一方、為替が大きく円安・ドル高に振れたことも、円建てゴム相場にはポジティブ。4月下旬には1ドル=140円水準までの円高になっていたが、5月12日には148.64円までの円安になった。ただし、株高一服後は145円台まで軟化しており、円安環境の支援は一服した。
産地相場はほぼ横ばいだった。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、1キロ=72バーツ水準で小動きになっている。ラテックスは小幅上昇したが、産地主導の積極的な売買は求められなかった。タイでは一部で豪雨も報告されているが、供給サイドの動向はあまり材料視されていない。JPXゴム先物は、逆サヤ(期近高・期先安)になっている。
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