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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、先行き不透明感で安値低迷

連載 2025-04-21

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=285~305円水準で売買が交錯する展開になった。世界経済の先行き不透明感、減速懸念の高まりを背景に4月9日の281.00円まで急落し、2024年2月以来の安値を更新していた。しかし、その後はパニック的とも言えるリスクオフが一服したことで、ゴム相場も下げ一服となった。ただし、安値修正を進めるような動きは鈍く、年初来安値圏で売買が交差する展開に留まった。為替が円高気味に推移したことはネガティブ。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台中盤まで軟化している。急落一服後は1万5,000元台を回復する場面もみられたが、米中対立の激しさから戻りは売られている。結果的に安値圏で低迷状態が続いた。

 引き続きトランプ米大統領の動向が注目されているが、米中間の対立は激化し続けている。トランプ政権の誕生後に新たに課された関税は、米国の対中関税が145%、中国の対米関税が125%に達している。中国政府はこれ以上の関税は意味がないとしてさらなる関税の応酬には否定的な立場を示しているが、一方で国内航空会社に対して米ボーイングの航空機の納入を受け入れないように指示したと報じられるなど、米中対立は関税以外の分野にも及び始めている。米政府は、中国向けの人工知能(AI)半導体輸出の規制を強化するなど、両国経済の断絶は一段と進んでいる。このまま通商環境の悪化が続けば、米中はもちろん世界経済の減速も避けられないとの警戒感が、ゴム相場の上値を圧迫している。

 一方で、トランプ大統領は自動車関税の「一時減免」を検討していることを明らかにしている。米国内への工場移管には時間が必要として、そのための猶予措置を講じる可能性が示唆されている。また、中国政府は米国が中国に対して敬意を示し、交渉責任者を指名するのであれば協議に応じる用意があるとしている。トランプ大統領が4月2日に相互関税を発表してから2週間が経過したが、数時間単位で悲観と楽観とが交錯する不安なマーケット環境が続いている。ゴム相場も上下双方に大きな値幅が形成されるも、明確な方向性は打ち出せていない。通商環境がどのように変化し、それが世界経済にどのような影響を与えるのかが注目されている。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は入電なし。東南アジアでは局地的な豪雨が報告されているが、供給リスクを織り込んでいくような動きはみられなかった。逆に減産期から生産期への移行期が近づいていることも、ほとんど材料視されていない。期近から期中にかけてのサヤは、おおむねフラット状態を維持している。

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