【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、上海ゴム主導でじり高に
連載 2024-12-02
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=360円台後半まで値上がりする展開になった。11月14日の340.00円をボトムに、360円台後半まで値上がりし、11月8日以来の高値を更新。特に目立った買い材料は見当たらなかったが、上海ゴム相場が安値から切り返したことが好感されている。為替は大きく円高に振れたが、上海ゴム主導で地合を引き締めている。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万7,000元台前半で下げ一服となり、1万8,000元台前半まで切り返す展開になった。この流れで、円高環境ながらもJPXゴム相場は地合を引き締めた。
トランプ米次期大統領は11月25日、米国で社会問題になっている薬物「フェンタニル」を巡って中国で製造された原料が使われているが中国政府は十分な対応を行っていないとして、中国から輸入される製品に対して10%の追加関税を課す方針を示した。また、メキシコとカナダに対しても、違法移民や薬物が米国に流入しているとして、両国からの輸入品に25%の関税を課す方針を発表した。中国とメキシコはともに米国に向けて輸出される自動車や同部品の生産拠点であり、自動車市場に大きな混乱が生じるリスクが米自動車株などを押し下げている。タイヤ向けゴムの需要環境にも不透明感をもたらす動きになるが、ゴム相場の反応は限定された。
鉄鉱石や石炭相場なども含めて、一次産品市場ではトランプ米政権発足後に実際にどの程度の関税策が実行に移されるのかを見極めたいとのムードが強くなっているためだ。トランプ氏は、交渉を有利に進めるために関税カードを使っているだけとの楽観的な見方もあり、米中通商リスクを積極的に織り込む動きは見送られている。マーケット全体が「トランプ劇場」とも言える不安定な値動きになっているが、ゴム相場に対する影響は限定されている。一方で、なにか上海ゴム相場を押し上げていくようなテーマが浮上したわけではないが、最近のボックス圏内で安値修正の動きが優勢になった。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、11月27日時点で前週比4.6%高の1キロ=75.81バーツ。11月中旬には70バーツ台を割り込んでいたが、安値修正の動きが優勢になった。しかし、産地でなにか大きな供給障害などが発生しているわけではなく、もっぱら上海ゴム相場と連動した値動きになっている。
為替市場での急激な円高圧力の発生はネガティブ。11月15日の1ドル=156.74円をピークに、27日には150.44円まで円高・ドル安が進行している。ただし、円高よりも上海ゴム相場高のインパクトが大きかった。
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