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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、天候不順で13年ぶり高値

連載 2024-09-23

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=370円台まで値上がりする展開になった。一時は381.60円まで上昇し、2011年8月以来となる13年1カ月ぶりの高値を更新した。産地気象環境の不安定化で、供給不安の織り込みが優勢の地合が続いている。

 上海ゴム先物相場は、中秋節の連休明け後に急伸し、年初来更新が続いた。9月13日の1万7,050元に対し、19日高値は1万8,045元に達している。8月以降は東南アジアから中国南部にかけてモンスーンが豪雨をもたらしているが、中秋節には中国南部も台風が直撃し、上海市でも交通が遮断されるなど大きな混乱がみられた。その影響もあり、天候リスクの織り込み優勢の地合が維持された。

 9月14日に発表された中国の8月経済指標は、鉱工業生産が前年同月比4.5%増(前月は5.1%増)、小売売上高が同2.1%増(同2.7%増)、固定資産投資が同3.4%増(同3.6%増)となっている。軒並み市場予想を下回る低調な数値になっており、中国経済の減速傾向は加速していることが確認されている。ただし、こうした指標を手掛かりに需要不安を織り込むよりも、供給不安の織り込みが優勢の地合が続いている。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、9月19日時点で前週比4.7%高の1キロ=88.28バーツ。3月下旬以来となる約6カ月ぶりの高値を更新し、今年の最高値に迫っている。

 東南アジアでは、引き続きタイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、フィリピンなど広範囲にわたってモンスーンの被害が報告されている。海水温度の高さから気象環境が不安定化しており、東南アジア5カ国で300人を超える死者が報告されているが、農産物供給への影響も警戒されている。

 東南アジアでは干ばつ傾向が強かったため、当初は土壌水分環境の改善に繋がる動きと歓迎する向きもあった。しかし、9月は豪雨に伴う水害の発生も広がりをみせており、農産物の供給リスクとしての警戒感が強くなっている。

 日本でも8~9月は台風直撃が増えているが、東南アジアは豪雨が通常の状態になりつつある。9月で水温が落ち着けば、モンスーンの活動も終息に向かうとの楽観的な見方もあったが、過去1カ月半以上にわたって気象環境は安定化の兆候をみせない状況が続いている。需要不安と供給不安が同時に高まっているため、ゴム相場も突発的な乱高下が目立つ状況だが、上値切り上げ傾向が維持されている。

 為替相場は、9月16日に1ドル=140円を割り込む円高・ドル安になったが、その後は143円水準まで切り返しており、為替環境もポジティブに。

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