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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地主導の上昇は続かず

連載 2023-02-06

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=220円台中盤まで反落する展開になった。1月27日には238.30円まで値上がりし、2022年10月11日以来の高値を更新していた。上海ゴム相場が春節の休場中に産地相場が急伸したことが、JPXゴム相場も大きく押し上げていた。しかし、連休明けの上海ゴム先物相場が急落すると、産地相場も軟化し、JPXゴム相場も早めに利食い売り優勢の展開になった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台後半まで下落している。連休明け直後は産地相場の急伸傾向を受けて、一時1万3,690元まで急伸した。しかし、その後は逆に戻りを売られる展開になり、結果的に連休前の値位置を下回っている。

 中国政府によると、春節中の国内旅行者数は前年比23%増となり、パンデミック前のおよそ9割水準に回復している。ゼロコロナ政策が終了してから初めての春節を迎えたが、人流の活発化が確認されたことはポジティブ。ただ、その影響で新型コロナウイルスが農村部に広がっているとの見方もあり、中国経済の正常化期待を織り込む動きにはブレーキが掛かっている。原油や非鉄金属相場なども上値を抑えられており、一方的な楽観ムードに対しては慎重姿勢が目立った。

 世界経済に関する評価も不安定化した。国際通貨基金は2023年の世界経済成長率見通しを2022年10月から0.2%引き上げ2.9%とした。中国経済の正常化期待が強くなっていることで、成長率見通しは「底打ちした」との評価を下している。ただ、2月も米国を含む主要国の中央銀行がインフレ対策の利上げに踏み切っていることで、世界経済の先行き不透明感も根強く、コモディティ価格は全体的に不安定な値動きになり、ゴム相場も急伸後に急反落と方向性が定まらなかった。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、2月2日時点でUSSが前週比4.7%高の1キロ=48.06バーツ、RSSが同6.1%安の50.25バーツ。前週比だとUSSがプラス圏での推移だが、高値からはともに大きく下押しされている。上海ゴム相場の連休中に急伸地合を形成していたが、高値を維持できなかった。短期間に大きく値位置が切り上がったことで、特にUSSの集荷量が急増している。時期的にはウインタリング(落葉期)を迎えるが、季節的な減産圧力よりも価格上昇を受けて農家の売却の意欲の強さの方が目立ったこともネガティブ。1月下旬の産地相場が急伸したことは投機的と評価された。

 また、為替相場が円高気味に推移したことも、円建てゴム相場の上値を抑えた。米国の利上げ終了時期が見えはじめており、ドル安・円高圧力が再開された。

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