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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国需要不安で一段安に

連載 2022-10-24

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=220円台中盤まで下落する展開になった。週前半は手掛かり難から薄商いの小動きに終始していたが、週中盤以降に上海ゴム相場が軟化したことで、円安環境ながらJPXゴム相場も上値を抑えられる展開になった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台後半での保ち合い相場を経て、突然に1万2,000元台前半まで急落し、9月9日以来の安値を更新する展開になった。何か大きな材料が浮上した訳ではないが、中国の需要環境に対する警戒感が蒸し返され、上値を圧迫されている。

 10月16~22日に中国共産党大会が開催されたが、ゼロコロナ政策を堅持する方針が示され、中国経済の減速懸念を改めて織り込む動きが優勢になった。今後も新型コロナウイルスの感染が拡大する度に経済活動を止める対策が繰り返されると、中国経済成長の下振れリスクは大きいとの慎重な見方が強まった。

 しかも、国慶節の連休中の人流が活発化した影響か、足元では再び新型コロナの新規感染者が増加し、首都北京では10月20日に住民の検査厳格化、一部住宅地のロックダウン(都市封鎖)などの新たな対策が講じられている。中国全体で感染者数が著しく増加している訳ではないが、先行き不透明感が高まっている。

 また、10月18日に予定されていた中国の主要経済指標の発表が見送られたことも投機筋の売りを呼び込んでいる。単純に共産党大会への関心を高めるための対応とみられているが、ネガティブな数値が共産党大会中に発表されることで、習近平国家主席の威信が傷つけられることを回避したのではないかとの思惑が広がったことも上海ゴム相場の上値を圧迫した。

 世界的に新車販売は改善傾向にあり、半導体供給環境が改善傾向を見せている影響が明確化している。ただ、ゴム相場に対する影響は限定的だった。新車用タイヤ需要見通しの改善が促されるが、逆にこれまで市場をけん引してきた買い替え用タイヤ需要の減速も同時に警戒されているためだ。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、10月20日時点でUSSが前週比0.9%安の1キロ=48.83バーツ、RSSが同3.1%高の52.50バーツとなった。タイでは北部を中心に豪雨や洪水被害の報告が続いているが、ゴム生産や流通に対する影響は限定されており、産地相場は不安定化している。インドネシアなどでも洪水被害が報告されており、ゴムに限らず農産物供給への懸念の声は強いが、天候リスクに基づく上昇には一服感も目立つ。産地主導で消費地相場を押し上げていくような動きは見られなかった。

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