コラム「Front Line」
内燃機関周りの合成ゴムはますます逼迫か
会員限定 連載 2022-06-20
自動車の内燃機関周りに使われる合成ゴムは、今の需要が継続すれば、今後ますます逼迫するかもしれない。合成ゴムメーカー、原材料商社ともに危惧する。背景にあるのが各国、地域で進む温室効果ガス等の規制。それが逼迫に拍車をかけそうだ。
近年、フッ素ゴムを代表格に、内燃機関周りに使用される合成ゴムは、需給逼迫が継続している。大きな要因は、需要量に対し供給量が追いついていないというアンバランスによるものだが、一方で積極的に供給量を拡大していくという動きはそれほど見えない。ここに課題がある。
「内燃機関がなくなるという未来が示されているのに、莫大な投資がかかる生産能力増強は、企業として実施できないだろう」と、合成ゴムメーカー関係者は話す。英国は内燃機関搭載車の新車販売を2030年までに禁止すると発表しているが、EUも2035年までにその新車販売が禁止されそうだ。「2035年といえば、もう13年しかない。その期間で投資の回収は難しい」(合成ゴムメーカー関係者)。
例外もある。例えば日本ゼオンは3月、高岡工場(富山県高岡市)で内燃機関周りのタイミングベルトやシール等に使用される水素化ニトリルゴム(HNBR)の生産能力を約10%(約400トン)増強すると発表した。これは建設機械用途、一般工作用途といった自動車以外の伸びが見込めることに加え、「投資額を抑えることができた」(日本ゼオン)点が大きい。
日本ゼオンの例が示すように、需給と投資額がバランスさえすれば、増強は可能だ。ただ、そうした例は決して多いわけではない。あとは「コスト構造が違いすぎてよく分からない」(同)という中国勢が、どのような動きをするのか。逼迫を続ける合成ゴム周辺の動きからは、まだまだ目が離せない。
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