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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国リスク一服で下げ一服

連載 2022-05-23

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=240円台で揉み合う展開になった。中国経済の減速懸念を背景に5月13日安値は240.40円に達し、3月15日以来となる約2カ月ぶりの安値を更新していた。しかし、その後は中国経済に対する信頼感が回復したことで下げ一服となり、ほぼ横ばいでの推移になった。積極的に上値を買い進むまでの勢いはなかったが、5月18日高値は247.80円になった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台を回復し、4月22日以来の高値を更新する展開になった。新型コロナウイルスの感染被害拡大でロックダウン(都市封鎖)などの行動規制が強化されるなか、5月9日には1万2,410元まで下落して年初来安値を更新していた。しかし、16日に上海市はロックダウン解除の見通しを示し、6月1日から段階的に行動規制を解除。6月中旬から下旬の正常化を目指すと発表した。まだ先行き不透明感も強いが、新規感染者数は着実に減少しており、少なくとも最悪期は脱しつつあるとの評価が、上海ゴム相場を下支えしている。鉄鉱石や非鉄金属、さらに原油相場なども中国需要環境の改善期待を織り込む動きを見せており、その流れの中で下げ一服感が強くなっている。

 上海ゴム相場の反発力と比較してJPXゴム相場の値動きは鈍いが、為替市場で円が反発傾向にある影響が大きい。米長期金利の上昇一服、不安定な株価環境などがドル/円相場の上値を圧迫している。このため、上海ゴム相場高と円高の強弱材料の綱引きになり、結果的に下げ止まったものの反発力は限定される中途半端な値動きなり、ボックス傾向が強くなった。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、5月19日時点でUSSが前週比0.3%安の1キロ=63.46バーツ、RSSが同1.4%高の68.82バーツ。USSは集荷量が抑制されているものの、5月入りしてからは横ばい気味の展開が続いている。RSSは逆に集荷量が安定しているが、上海ゴム相場の堅調地合と連動して底固く推移している。ただ、JPXゴム市場においては、産地市場の動向はあまり材料視されていない。サヤも当限から期中にかけてはほぼフラット化しており、目立った動きを見せていない。

 異常気象・ラニーニャ現象が続いていることが穀物相場を不安定化させているが、ゴムに関しては天候リスクを織り込んでいくような動きは鈍い。乾季から雨季への移行に伴い降水量は総じて安定しており、供給サイドのリスクを相場にプレミアムとして加算していくような動きも見られない。もっぱら上海ゴム相場と円相場の動向を見ながらの展開になった。

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