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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、年初来安値後の修正高

連載 2021-09-20

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=200円台前半まで小幅切り返す展開になった。9月10日には一時197.40円まで下値を切り下げて年初来安値を更新していたが、持ち高調整の動きで200円台を回復している。特に目立った買い材料は見当たらなかったが、上海ゴム相場主導で安値修正の動きが優勢になった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台後半まで切り返している。9月9日安値は1万3,215元となっていたが、持ち高調整の動きが活発化した。

 中国経済の減速感は維持されているが、ゴム相場を一段と押し下げることは見送られた。8月小売売上高は前年同月比2.5%増(前月は前年同月比8.5%増)、8月鉱工業生産は同5.3%増(同6.4%増)となり、中国経済活動が8月に一段と鈍化したことが明確に確認できる状況になっている。また、中国では不動産開発大手の中国恒大集団の債務問題がクローズアップされており、デフォルト(債務不履行)によって信用不安が広がるのではないかとの警戒感も強くなっている。このため、上海株式相場は最近の堅調地合から一転して急反落しているが、上海ゴム相場に対する影響は限定された。

 新型コロナウイルスの感染被害が世界的に広がりを見せていること、半導体不足で世界の自動車生産台数が大幅に落ち込むなど、需要サイドには依然としてネガティブ材料が目立つ状況にある。ただ、原油相場が大きく水準を切り上げたこと、非鉄金属相場が比較的底固く推移したこともあり、ゴム市場では短期筋の持高調整が優先された。積極的に上値を買い進まれたというよりも、最近の急落地合に対する反動高の意味合いが強い値動きになっている。

 一方、タイ中央ゴム市場の集荷量は、9月16日時点でUSSが前週比0.8%高の1キロ=50.31バーツ、RSSが同1.7%高の53.02バーツとなっている。価格水準が大きく切り下がったものの、集荷量は安定している。ただ、産地主導の価格形成は見送られており、消費地相場の安値修正の動きが産地相場も若干押し上げる展開になっている。

 東南アジアでは新型コロナウイルスの感染被害が収束傾向にあり、供給不安は徐々に解消される方向性にある。ベトナム、タイ、マレーシアなどはまだ新規感染者の報告数が高止まりしているが、それでもトレンドとしては減少傾向に転じている。ベトナムでは、ホーチミン市の外出禁止が9月30日まで延長されるなど混乱した状況が続くが、改めて供給リスクを織り込むような動きは鈍い。需要リスクの織り込みの有無が重視されている。

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