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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、原油反発もゴムはじり安

連載 2021-08-30

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=210円台を割り込む軟調地合になった。8月19日の230.20円をピークに戻り売り優勢の展開になり、2020年10月20日以来の安値を更新している。原油相場は急落地合から一転して安値修正の動きを強めたが、ゴム相場に対する買い圧力は強まらず、戻り売り優勢の展開が維持されている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台前半で上値の重い展開になった。8月19日には一時1万5,000元台に乗せていたが、逆に1万4,000元割れが警戒される状況になっている。値動きは不安定であり、戻り高値更新と下値切り下げが同時進行しているが、全般的には上値の重さが目立った。

 8月中旬は、①新型コロナウイルスの感染拡大、②中国経済の減速懸念、③米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリングを巡る議論などが、リスク資産全体を下押しした。実体経済と投資環境の双方が悪化するとの見方が、原油を筆頭としたコモディティ相場を大きく押し下げ、その流れの中でゴム相場も値下がりしていた。

 8月下旬は短期的な下げ過ぎ感に加えて、米食品医薬品局(FDA)がファイザーとビオンテックが共同開発した新型コロナワクチンを正式承認したことで、ワクチン接種が加速するとの思惑から、株価や原油相場が大きな切り返しを見せた。しかし、ゴム相場はこうした地合の中でも戻り売り優勢の展開が続き、地合の悪さが再確認されている。

 新型コロナの感染被害が広がり続けていること、中国経済の減速懸念が払拭されていないこと、さらに自動車生産抑制の動きが、ゴム相場の上値を圧迫している模様だ。トヨタ自動車が9月の大規模減産を発表したことが大きなニュースになったが、半導体不足に加えて、東南アジアからの自動車部品供給の停滞を受けて、自動車メーカー各社が工場の稼働休止を相次いで発表している。タイヤ需要に関しては、好調な買い換え用需要でカバーできるとの見方もあるが、新車用需要の落ち込みは避けられない状況にあり、素材市況全体の中でもゴム相場は特に地合の悪さが目立った。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、8月26日時点でUSSが前週比0.2%安の1キロ=52.45バーツ、RSSが同2.3%安の55.78バーツ。USSの集荷量がやや抑制されているが、RSSの供給量は安定しており、産地主導の値上がり圧力は確認できなかった。消費地相場の上値の重さにつれ安する展開になっている。JPXゴム相場は2022年2月限が新甫発会しているが、当先で10円程度の順サヤ(期近安・期先高)環境が維持されている。

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