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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、欧州ロックダウンで急落

連載 2021-03-29

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=250円台前半まで急落する展開になった。270円台をコアに揉み合う展開が続いていたが、欧州で新型コロナウイルスの感染被害が拡大していること、リスク投資環境全体の地合悪化を受けて、急落している。2月15日以来の安値を更新している。

 上海ゴム先物相場も、1トン=1万5,000元台前半での膠着相場を下抜けし、1万4,000元の節目に迫る急落地合になっている。

 世界経済の回復に伴うタイヤ需要環境の改善傾向を背景に底固い展開が続いていたが、欧州地区の需要環境悪化が警戒され、調整売り優勢の展開になっている。欧州では新型コロナの変異種が広がりを見せており、3月15日にイタリア、20日にはフランスがロックダウン(都市封鎖)の再開を決めている。また、ドイツも3月28日までとしていたロックダウンの期間を4月18日まで延長している。4月1~5日にイースター休暇を控える中、旅行やパーティなどによる感染拡大が強く警戒されている。

 現時点では世界全体の新規感染者数が急増している訳ではないが、少なくとも欧州地区の需要環境悪化は避けられない。また、これによって投資環境が急激に悪化している影響も無視できない。原油を筆頭に非鉄金属、さらには農産物市場でもファンドが手仕舞い売りを進める動きが観測されている。特にNY原油先物相場は3月8日の高値1バレル=67.98ドルに対して、23日安値は57.25ドルに達し、2週間強で最大15.8%の急落地合になっている。

 米国ではバイデン大統領が3月31日に数兆ドル規模の大型インフラ投資計画を打ち出す見通しになっており、トラックなどの商用車向けタイヤ需要が上振れし易い環境はポジティブ。ただ、短期スパンでは欧州の需要不安、投資環境の不安定化を解消できるか否かの方が重視され易い環境になっている。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、3月25日時点でUSSが前週比3.4%安の1キロ=61.30バーツ、RSSが同0.8%安の64.97バーツとなっている。減産シーズンに差し掛かる中で集荷量は抑制されているが、産地主導の値上がり圧力を確認することはできていない。

 もっぱら上海ゴム相場の動向が重視される地合になっているが、その上海ゴム相場は投機色が強くなっている。JPXゴム先物市場では出来高の低迷傾向が顕著であり、買い方の投げ売りが膨らんでいるが、積極的な売買は見送られている。サヤバランスも乱れておりマーケット環境の不安定さが目立つ。

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