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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、慎重に上値を試す展開

連載 2020-11-30

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=220円水準でサポートされ、230円台まで切り返す展開になった。売買が交錯する不安定な地合が続いているが、11月2日以来の高値を更新しており、トレンドとしては10月の急騰相場の反動安を消化した後の反発局面が維持されている。

 上海ゴム先物相場も、1トン=1万4,000元水準を下値に1万4,000元台中盤まで値上がりしている。11月6日以来の高値を更新している。

 グローバルマーケットでは新型コロナウイルスのワクチンに対する期待感が最重要視されている。12月中旬にも緊急使用の許可が下り、年内には医療関係者や高齢者などを対象に一般向け接種が開始される可能性があるためだ。ダウ工業平均株価は史上初となる3万ドルを突破したが、原油や銅などの産業用素材市況も軒並み高騰しており、ゴム相場も上昇し易い環境になっている。

 欧米で新型コロナウイルスの感染者、死者が急増しており、米国では雇用指標悪化など景気減速の兆候も目立ち始めている。しかし、足元の景気低迷リスクよりも、来年の経済活動正常化期待の織り込みが優勢になっている。足元の新車販売鈍化のリスクよりも、来年に自動車販売や走行距離が伸び、タイヤ需要が上振れするとの期待感が、ゴム相場を下支えしている。もっとも、原油や銅相場などと比較すると値動きは鈍く、下値は堅いものの上値追いには慎重ムードが目立つ。

 一方、産地相場も慎重な上昇地合になっている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、11月26日時点でUSSが前週比1.5%高の1キロ=62.67バーツ、RSSが同4.7%高の66.11バーツとなっている。集荷量が改めて低迷傾向を強める中、産地相場も緩やかに上昇している。ただ、産地相場は戻り高値を更新するまでの勢いはなく、消費地相場と比較すると値動きの鈍さが目立った。

 消費地相場ではワクチンに対する期待感を背景としたリスクオン環境、産地相場ではラニーニャ現象による天候不順を背景とした供給不安が、それぞれゴム相場を下支えしている。地合は徐々に引き締まる方向性にある。ただ、10月の急騰相場後の不安定な地合が続く中、気迷いムードの強さが目立つ。

 なお、11月月限が納会を迎えたが、受渡価格は250.00円となり、10月限の274.80円から24.80円値下がりした。今年二番目の高値だが、5カ月ぶりに値下がりしている。受渡高は146枚であり、10月限の360枚から急減している。

 生ゴム指定倉庫在庫は、11月10日時点で前旬比357トン減の3,791トン。前年同期の3割水準に留まっている。

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