【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、3ヵ月ぶり高値も伸び悩む
連載 2020-06-15
(マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努)
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=167.60円まで値上がりして3月11日以来の高値を更新した後、160円水準まで上げ幅を削る展開になった。
上海ゴム先物相場は1トン=1万元台中盤まで小幅値上りし、こちらも3月11日以来の高値を更新している。
新型コロナウイルスの感染被害対策の行動規制は、日本も含む世界各国で段階的に緩和されている。中南米で感染被害が猛威を奮っているが、欧米やアジアの主要国では経済活動が正常化プロセスを進めており、必然的にゴム需要も上振れしやすい環境になっている。
新車販売環境に関しては、新型コロナウイルス感染の脅威が残る間は、長期にわたって低迷が続く可能性も警戒されていた。ワクチンや治療薬の開発には時間が必要であり、行動規制が緩和されても、新車販売が正常化に向かうのかは、疑問視する向きも多かった。
しかし4~5月の各国の販売統計を見る限りだと、少なくとも想定よりは早いペースで回復に向かっている可能性が高まっている。最大市場である中国の場合だと、5月新車販売台数は前年同月比14.5%増となり、4月の同4.4%増からさらに加速している。2ケタの伸び率は2018年4月以来のことであり、新型コロナウイルスの影響で購入を先送りしていた消費者が、各種補助金や商品券交付の景気刺激策の効果もあり、マーケットの想定を上回る勢いで新車を購入していることが確認できる。商用車についても販売環境は良好との報告が目立ち、少なくとも新車用タイヤ需要環境は着実に改善している。
新車用と比較すると買い替え用タイヤの落ち込みは限定されていたが、こちらも改善に向かうとの期待感が一段と高くなっている。
非鉄金属や原油相場なども緩やかなペースで値位置を切り上げており、産業用素材市況全体の上昇地合がゴム相場も支援している。ただ、4月以降の急ピッチな株高・商品高の展開に関しては過熱感を指摘する声も強くなっており、持高調整の動きが上値を圧迫している。為替市場でも、一時は1ドル=109.84円まで円安が進行していたが、その後は107円水準まで円高に振れている。
一方、産地では相変わらず集荷量が低迷している。タイ中央ゴム市場の現物相場は、6月11日時点でUSSが前週比0.9%高の1キロ=39.73バーツ、RSSが同2.2%高の43.14バーツとなっている。5月下旬から産地相場はほぼ一本調子で値上がりが続いている。足元では東南アジア通貨高に一服感も見られるが、産地相場の上昇が続いている間は、消費地相場も大きく値崩れを起こすのは難しい状況が続く。
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