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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、経済正常化でじり高傾向

連載 2020-06-08

(マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅努)
 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=150円台中盤で底固く推移している。急伸するような勢いはみられなかったが、6月3日高値は157.70円に達し、3月19日以来の高値を更新している。

 ただ、こうした堅調地合は期先限月に限定されており、当限は逆に軟化している。5月中旬までは140円水準での取引になっていたが、6月入りしてからは130円台を割り込んでいる。

 その結果、期近安・期先高と限月間でまちまちの展開になり、4日終値時点の当先の順サヤ(期近安・期先高)は24.60円に達している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万元台前半で底固く推移したが、5月21日の直近高値1万580元を上抜くまでのエネルギーはなかった。

 ゴム市場に限らず、産業用素材市場全体が経済活動正常化の流れを好感し、底固く推移している。銅、鉄鉱石、原油相場なども底固く推移しており、むしろゴム相場は伸び悩んでいるとの評価も可能な状態にある。

 新型コロナウイルスは中南米で猛威を振るった状態が続いているが、世界全体としては感染被害が収束に向かっており、経済活動に対する規制が段階的に緩和されている。

 自動車生産に関しても、労働組合の反対で再開が遅れていた北米や中米の工場が本格稼働し始めている。5月は、需要の低迷、部品のサプライチェーンを巡る混乱、従業員の感染対策などから工場の稼働率を抑制する動きが目立ったが、6月には稼働率の引き上げ予定を発表しているメーカーが多い。

 新車販売に関しては、中国汽車工業協会が同国の5月新車販売台数について、前年同月比11.7%増になったとの見通しを示している。4月の4.4%増に続いて、販売環境は良好だった模様だ。補助金や商品券の交付など、販売刺激策が一定の成果を挙げている。

 米国でも4月の新車販売は前年同月比で46.6%減となったが、5月は20%減程度まで改善しているとみられる。

 各国で経済活動の正常化が、従来想定されていた以上のペースで進展しており、新車用タイヤのみならず買い替え用タイヤの需要環境についても、極めて厳しい状況だが、想定外の悪化は避けられつつある。

 一方、産地では集荷量の低迷が続いている。タイ中央ゴム市場では5月に入ってからも集荷の改善が見られなかったが、6月入りした後も低迷状態に変化はみられない。新型コロナウイルスによる混乱が継続している模様であり、産地相場が値上がりし始めている。6月4日時点では、USSが前週比0.8%高の1キロ=38.21バーツ、RSSが同1.5%高の41.55バーツとなっている。

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