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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、期先堅調も、当限は低迷

連載 2019-10-28



マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=170円台を回復する展開になった。上海ゴム相場の堅調地合が維持される中、10月23日に付けた高値は171.40円に達し、9月18日以来の高値を更新している。ただ、期近限月は150円水準で特に目立った値動きを見せておらず、上昇しているのは専ら期先限月に留まっている。

 その結果、当先の順サヤ(期近安・期先高)は17日の13.90円から24日には19.80円まで拡大し、サヤバランスは大きな乱れを見せている。

 上海ゴム先物相場は、10月入りしてからの上昇地合を維持し、1トン=1万2,000元の節目に迫る堅調地合になっている。概ね9月の取引レンジを踏襲する値動きだが、9月24日以来の高値を更新している。

 タイ中央ゴム市場では22日分までしか入電が行われていないが、18日に対してUSSが0.7%高の1キロ=37.67バーツ、RSSが同0.3%高の39.42バーツとなっている。産地では引き続き安定した降水量が確保されている。インドネシアのジャワ島で乾燥状態が続いているが、全般的に特に目立った気象トラブル等の報告はない。

 ただ、タイの農業当局は21日、天然ゴム生産地で病原菌「ペスタロチオプシス」の感染が広がりを見せていることを報告している。南部のナラーティワート県など3地域で感染が報告されており、タイゴム協会は1万6,000ha前後の面積で被害が発生しているとしている。

 この「ペスタロチオプシス」は今年に入ってからインドネシア、マレーシアと感染被害が拡大しており、特にインドネシアでは上期の生産量が前年同期比7.5%減と大きく落ち込んだ一因とされている。仮にタイでも感染被害が拡大すると、タッピング(樹液の採取)の停止や感染した老木の伐採など大規模な対応を求められる可能性がある。タイゴム協会は、感染地域では生産量が最大で半減する可能性も指摘しており、今後の展開には注意が求められる。

 これが東京ゴム相場上昇の主因との見方もあるが、東京ゴム相場で上昇しているのは期先限月のみであり、現時点では産地主導の上昇圧力を認めることはできない。病害の感染被害拡大は、ゴム相場の低迷によって農家が十分な投資を行えていない影響も指摘されており、ゴム相場が中長期的に維持することが困難な安値圏に到達し始めているとの見方を支持している。

 一方で、現在の上昇圧力は9月下旬から10月初めにかけての急落相場に対する反動高の域を脱していない。当先で20円前後の順サヤには過熱感が強く、このまま当限の安値低迷状態が続くと、期先の上昇圧力は一服する可能性が高まる。

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