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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海主導で安値修正の動き

連載 2019-10-14



マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=154.30円まで値下がりして年初来安値を更新した後、160円水準まで反発する展開になった。

 10月1-7日まで中国が国慶節の連休入りする中、産地相場主導で下値を切り下げていた。特に目立ったネガティブ材料は見当たらなかったが、10月10-11日の米中通商協議の不透明感もあり、ゴム相場の上値は圧迫された。しかし、8日に取引が再開された上海ゴム相場が安値を拒否したことで、産地相場は下げ止まり、つれて東京ゴム相場は安値修正局面に移行している。9月下旬の急落相場に対する反動高の局面を迎えている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台中盤で底固く推移している。急伸するような勢いは見られなかったが、連休中の産地や東京ゴム相場の急落地合とのバランスを取る急落を拒否し、相対的な底固さをみせた格好になる。これを受けて、産地相場では下げ過ぎ感が強く意識され、次いで東京ゴム相場も安値修正局面に移行した。

 タイ中央ゴム市場の集荷量は、USS、RSSともに目立った変化はみられない。産地降水量は総じて安定している。インドネシアでは引き続き降水量が不足がちだが、産地主導で安値修正を進めるような動きまではみられなかった。

 現物相場は、10月10日時点でUSSが前週比0.2%安の1キロ=36.31バーツ、RSSは同2.8%高の38.77バーツとなった。USSは36バーツ台で概ね横ばいとなったが、RSSは9月27日以来の高値を更新している。まだ底打ちしたかの判断には慎重姿勢が求められるが、少なくとも急落傾向には一服感が目立つ状況にある。

 10月入りしてからのマーケット環境の大きな変化は、中国や欧州などに続いて米国経済にも減速感が強くなっていることだ。こうした中、10-11日に米中通商協議が開催され、その結果によって14日以降のマーケット環境は大きく変わることになる。

 仮に米中間で部分合意などの形で制裁・報復関税の発動停止といった成果が得られると、投資家のリスク選好性の高まりが、ゴム相場に対して安値修正を促し易くなる。一方、通商協議で何ら成果が得られなかった場合には、改めて世界経済の減速懸念、それに伴うゴム需給の緩みを価格に織り込む必要性が高まり、ゴム相場の値下がりリスクは高まることになる。

 産地主導の急落相場が、上海ゴム相場主導で下げ一服感を強め始めているが、米中通商協議の結果次第で10月中旬は改めて波乱の展開になる可能性を抱えている。 

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