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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、株高・円安一服で調整売り

連載 2019-09-30


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=160円台中盤まで軟化する展開になった。

 9月入りしてからは株高、円安、更には原油高を背景に買いが膨らみ、一時は173.90円(9月17日)まで値上りしていた。しかし、月末にかけては株安、円高、原油安が調整売りを誘い、一時160円台を割り込むなど再び上値が重くなっている。ただ、出来高は極端な低迷状態にあり、積極的に売買を仕掛けるような動きは限定された。9月から続く160円台をコアとしたボックス圏内での調整圧力に留まっている。

 上海ゴム相場も軟調だった。1トン=1万2,000元台を回復する場面も見られたが、同水準を維持できず、1万1,000元台中盤まで軟化している。8月28日以来の安値が更新されており、9月入りしてからの上げ幅が相殺されている。中国市場では株高一服と連動して主要商品相場が軒並み下落しており、その流れの中で上海ゴム相場も上値の重さが目立った。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、9月26日時点でUSSが前週比1.0%安の1キロ=39.67バーツ、RSSが同1.5%安の40.71バーツ。総じて安値保ち合い気味の展開が続いているが、ややRSS相場の上値の重さが目立った。集荷量が若干上向いており、産地主導の安値修正には失敗している。

 産地の気象環境は、タイ、ベトナム、カンボジアなどでは安定した降雨が観測される一方、インドネシアとマレーシアでは再び降水量が落ち込み始めている。土壌水分不足が深刻化するには至っていないが、地域間で降水量に格差が生じていることには注意が必要。

 リスク投資環境全体が不安定化しているが、これは米中通商協議の開催が近づいている影響が大きい。10月第2週に閣僚級の通商協議が開催されるが、トランプ米大統領の発言が揺れ動いており、先行き不透明感が強い。国連総会の演説では、中国の通商慣行を強く批判したが、その翌日には予想されているよりも早く合意が実現する可能性を指摘するなど、マーケットはトランプ大統領の発言に振り回されている。

 仮に米中通商関係の大幅な改善が実現するのであれば、年末から来年にかけての世界経済見通しは大きく修正され、ゴム相場の下値不安も後退する。一方、米中対立の根深さだけが確認される事態になると、需要下振れリスクを織り込む形で軟化するリスクが高まる。

 ただ、中国は10月1日が建国70周年であり、1-7日までが連休になる。中国市場参加者は連休入りするため、ゴム相場は大きく動きづらくなり易い。産地相場の値動きが鈍い以上、国慶節の連休明け後の米中通商協議の結果待ちになる。

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