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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地相場に上昇一服の兆候

連載 2019-06-24


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=200円水準、TSRが160円水準まで、それぞれ軟化した。RSSの当限は前週に続いて年初来高値を更新する展開が続き、上昇トレンドを形成している。しかし、期先限月は当限主導の上昇地合に対して明確な拒否反応を示し、6月7日の207.90円をピークとした値下り傾向を強めている。

 上海ゴム先物相場も、6月12日の1トン=1万2,550元をピークに再び1万1,000元台後半まで値下がりし、5月24日以来の安値を更新している。

 5月下旬から急伸地合が続いていた産地相場だが、ここにきて値動きが不安定化し始めている。USSに関しては、6月20日時点で前週比2.2%高の1キロ=56.77バーツとなっており、高値更新サイクルを維持している。一方、RSSは同1.2%安の59.02バーツとなっており、60バーツ台を維持できずに調整圧力が目立つ状況になっている。

 RSSに関しては、集荷量が上振れ傾向を見せている。6月10―14日が平均で日量102.65トンだったのに対して、17―20日は218.03トンと約2倍の集荷が行われている。

 エルニーニョ現象が発生していることは間違いないが、東南アジアではジャワ島など一部を除いて適度の降雨が観測されており、深刻な供給障害が発生している訳ではない。高温傾向は間違いなく強いが、モンスーンの発生もあって土壌水分不足が更に深刻化する状況にはなく、RSSに関しては減産期入りする前の集荷水準を回復しつつある。

 USS高とRSS安と産地現物相場は評価が割れる状況にあるが、これまでの一本調子の上昇地合が約1カ月ぶりに修正を迫られつつある。産地相場の上昇は、供給「障害」というよりも供給「不安」に支配されているもののため、集荷量の回復傾向がいつ産地相場の上昇地合にブレーキを掛けるのかが注目される局面になる。

 一方で、東京ゴムの期先限月は、上値の重さが目立ち始めている。現在の期先は11月限であり、流石に冬場まで供給不安が続くとは考えられていない。6―8月限に対してはプレミアムが加算されているが、改めて期近主導で上昇するのか、それとも期先主導で軟化するのかが問われている。

 最近はもっぱら供給サイドの動向ばかりが注目されているが、中国の5月貿易収支や鉱工業生産などの指標は中国経済の減速傾向が深刻化していることを示している。6月28―29日の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて米中首脳会談の開催が決まっているが、ここで世界経済の先行き不透明感を後退させることができるか否かも注目度が高い。

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