【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地相場の上昇続く
連載 2019-06-10
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=200円台前半まで急伸、TSRが160円台中盤まで小幅高となった。当限主導の上昇地合に一服感が広がる場面もみられたが、産地相場の上昇傾向が続く中、週後半に改めて急伸する展開になっている。RSSの期先200円台乗せは3月中旬以来のことになる。
5月中旬以降は東京ゴムの当限が急伸地合を形成し、180円台後半から210円台中盤まで値上りし、今年最高値を更新していた。それでも5月28日以降は高値更新が見送られ、期先限月も190円台前半で上げ一服となっていた。しかし、その間も産地相場の高値更新サイクルは続き、6月6日の取引で東京ゴム相場は当限が220円台、期先が200円台まで一気に値位置を切り上げている。
タイ中央ゴム市場では集荷量が徐々に上振れしているが、エルニーニョ現象が発生している事で供給不安が根強く、現物相場は値上り傾向が続いている。USSは6月6日時点で前週比0.6%安の1キロ=52.42バーツと高値更新後に若干弱含んでいるが、RSSは同1.9%高の56.36バーツとなっており連日のように年初来高値を更新している。
今年はエルニーニョ現象が発生していることで、世界の気象環境が不安定化している。東南アジアでは乾燥傾向が報告されており、集荷量が伸び悩むのではないかとの警戒感が維持されている。現在は、減産期から生産期に移行する転換期であり、集荷量のデータを見る限りだと、いわゆる「ハード・ウインタリング」といった大規模な天候障害を確認することはできない。
ただ、5月下旬以降はシカゴ穀物相場を筆頭に、コーヒー、砂糖、綿花、パーム油といった主要農産物価格が軒並み上昇しており、ゴム市場においても天候相場型の値上がり圧力が確認されている。
天然ゴムは、供給サイドからみると農産物、需要サイドからみると産業用素材という二面性を有しているが、足元では前者としての性格が重視されている。天候相場はオーバーシュート気味の値動きになることも少なくないため、産地相場の上昇がいつまで続くのかが焦点になる。
一方、需要サイドを取り巻く環境は厳しい状態が続いている。米中対立解消の目途は立たず、国際通貨基金(IMF)などが世界経済見通しの下方修正に踏み切っている。こうした動きが非鉄金属や原油などの産業用素材市況を軒並み押し下げているが、ゴム相場に対する影響は限定されている。需要減退リスクよりも、供給低迷リスクがより重視される相場環境が続いている。
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