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溶剤系に替わる水系接着剤

帝人フロンティア、環境対応型接着技術の開発進める

工業用品 2021-06-10

開発したベルト補強用ポリエステル繊維コードの外観


 帝人グループで衣料繊維および製品、産業資材を製造・販売する帝人フロンティアでは、環境対応型接着技術(溶剤代替水系接着技術)の開発を進めている。

 同社の取り扱い製品は幅広く、ゴム業界に向けてはタイヤやホースの補強コードやベルトの心線(ケーブルコード)を製造・販売している。

 現在、ゴムと繊維を接着するために、水系接着剤が多く用いられているが、一部用途では溶剤系接着剤が用いられている。溶剤系接着剤は強固な接着を実現するが、有害な有機溶剤が含まれているため、作業者や環境にとっては負荷がかかるという課題があった。同社ではこうした溶剤系接着剤の代替として、水系接着剤の開発を進めている。

 ゴム製品の中でも、溶剤系接着剤の使用比率が高いのが伝動ベルトだ。「溶剤系接着剤は有機溶剤を使用するため、作業者への負荷、乾燥機による大気への負荷、有機溶剤に対応するための専用設備など、環境負荷だけでなく、経済的な負担も大きい。これを水系接着剤に置き換えることで、環境負荷だけでなく、コストも低減することができる」(帝人フロンティア技術・生産本部技術開発部産業資材開発課鈴木芳史氏)。

 これまで伝動ベルトでは、ポリエステル繊維を束ねて心線として使用する際に、反応性ポリマーをプライマーとして有機溶剤の中に溶解することで含浸性を高め、強固な接着力を発現させていた。これを水系接着剤に置き換えるためには、溶剤系接着剤に匹敵する含浸性と接着力を発現させることが課題だった。

 同社では、この課題を克服するために、反応性モノマーを採用。プライマーの分子・架橋構造を制御することで、溶剤系接着剤と同等の含浸性と接着力の付与に成功した。

 「例えば心線とエチレンプロピレンゴム(EPDM)との接着では、従来技術と比較して2.5~3倍の接着力を得ることができる。また、繊維内部への含浸性も向上しているため、心線の収束性にも大きな効果がある。既存加工設備での生産対応が可能で、溶剤系接着剤を使用する時のような大規模な設備を導入・設計する必要もない」(同)という。

 現在同社では、新開発の水系接着剤「水系stiff繊維コード」をサンプル出荷しており、ユーザーからも高い評価を得ている。

 「ベルトメーカーによって使用するゴムの種類はさまざまで、ベルト製品によってカスタマイズは必要になる。短期間で溶剤系接着剤すべてを水系接着剤に置き換えていくことは難しいが、環境負荷低減への世界的な流れもあることから、将来的にはすべての溶剤系接着剤を水系接着剤へと置き換えていきたい」(同)

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