名大と日本ゼオンが共同開発のTPE
FRPよりも耐衝撃性に優れることが明らかに
原材料 2021-12-23
名古屋大学大学院工学研究科有機・高分子化学専攻(未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所兼務)の野呂篤史講師らの研究グループは、日本ゼオンと共同開発したイオン性の熱可塑性エラストマー(TPE)「i-SIS」が繊維強化プラスチック(FRP)よりも耐衝撃性に優れることを新たに明らかにした。
i-SISは、スチレン系TPEの1つであるスチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)のイソプレン部に化学修飾を施し、部分的にイオン性官能基を導入した新たな熱可塑性エラストマー。野呂氏らグループと日本ゼオンが共同で開発した。野呂氏らはすでに、引張強度、タフネス(破断までに要するエネルギー)が従来型のSISの4倍以上の値を示し、世界トップクラスの高靭性を示すことを明らかにしていた。
今回の研究では、i-SISの耐衝撃性を直接的に評価。従来型の非イオン性のSISの耐衝撃性と比較したところ、3.1~4.4倍高いことが分かった。また、高強度複合樹脂材料であるガラス繊維強化プラスチック(GFRP)との比較では同定度、もしくはイオンの種類・価数を変えたi-SISでは、それを凌ぐ耐衝撃性を示すことが明らかとなった。軽量でありながらもそうした特性を示すi-SISを、耐衝撃性が要求される移動体のボディや関連部材等で利用することにより、移動体の軽量化や、軽量化を通じた低燃費化への寄与、脱炭素社会実現への貢献が期待される。
同研究成果は、2021年12月20日付でアメリカ化学会出版が発行するオープンアクセス誌「ACS Omega」に掲載。また、雑誌の表紙でも研究内容が取り上げられる予定だ。
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