名大大学院野呂講師らとアイシン化工の共同研究で
耐衝撃性が飛躍的に向上した構造用接着剤を開発
原材料 2024-09-25
名古屋大学は9月24日、同大学大学院工学研究科の野呂篤史講師(未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所および脱炭素社会創造センター兼務)らの研究グループが、アイシン化工との共同研究により、優れた衝撃強度や剥離強度を有する次世代構造用接着剤を開発したと発表した。今回開発した接着剤を自動車等に用いることで、車両軽量化や走行安定性向上、燃費改善、排出ガス削減に大きく寄与する。同研究成果は、9月21日付で米国化学会雑誌「ACS Applied Materials & Interfaces」のオンライン版に掲載された(DOI: 10.1021/acsami.4c12540)。
現在、構造用接着剤として最も広く使われているエポキシ樹脂系接着剤は、優れた機械的強度と耐久性を持つものの、一方で硬化物は一般的に硬く柔軟性に乏しいため、衝撃強度や剥離強度が低く、外力に対し破損しやすいという課題があった。衝撃強度や剥離強度を高めるには、柔らかいゴム成分を添加し均一に分散させるのが効果的だが、ゴム成分は通常エポキシ樹脂には溶解しないため、その分散が難しいのが現状だった。
今回開発した次世代構造用接着剤は、エポキシ樹脂に不溶なゴム成分と可溶な成分を分子レベルで結合させた添加剤として、スチレン系熱可塑性エラストマーの一種であるポリスチレン‐b‐ポリイソプレン‐b‐ポリスチレン(SIS)ブロックポリマーを用い作製した。これによりゴム成分をエポキシ樹脂中に均一に分散させることができ、硬化後の接着剤への柔軟性や耐衝撃性の付与を可能にした。
SISを添加したエポキシ樹脂系接着剤は、ゴム成分未添加のエポキシ樹脂系接着剤と比較して、衝撃強度が約11倍、剥離強度が約1.3倍に向上。また、名古屋大学らが独自開発した水素結合性SISを添加した場合、衝撃強度は約22倍、剥離強度は約2.1倍にまで高まった。いずれもゴム成分未添加のエポキシ樹脂系接着剤に比べ、性能が大幅に向上している。従来のエポキシ樹脂系構造用接着剤と同様に異種接合も可能だ。
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