【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、底固いが上値攻めきれず
連載 2018-03-12
マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=190円台前半をコアに揉み合う展開になった。為替は円高気味に推移したが、産地・上海ゴム相場が明確な方向性を打ち出せなかったことで、東京ゴム相場も方向性を欠いた。出来高も低迷しており、積極的な売買は見送られている。
上海ゴム相場は1トン=1万3,185元まで値位置を切り上げ、1月31日以来となる約1ヵ月ぶりの高値を更新した。1万3,000元台に定着するには至っていないが、2月中旬の1万中盤からは明確にコアレンジを切り上げることに成功している。
コモディティ市場全体を見れば、トランプ政権の保護主義政策が貿易戦争に発展するとの警戒感から、鉄鉱石や石炭、非鉄金属など幅広い銘柄が下落圧力に晒されている。こうした中、上海ゴム相場は一定の底固さを示すことに成功している。大きく上昇することはなかったが、他資源価格との比較では相対的な底固さが目立った。
3月5日に開幕した中国全国人民代表大会(全人代)では、2018年の成長目標が前年と同じ6.5%前後で堅持された。昨年の成長実績が6.9%だったことからは保守的とも言えるが、これまでと同様に経済の「量」から「質」への転換を志向する流れが維持されることが強く示唆されている。ただ、上海ゴム相場は中国のマクロ経済環境に対する関心を低下させており、特に目立った反応を見せなかった。
中国の2月貿易収支は、輸出が前年同月比44.5%増、輸入が同6.3%増となった。輸出はサプライズ感のある強さになったが、こちらも殆ど材料視されていない。
一方、東南アジアでは再び乾燥傾向が強くなっている。マレーシアのボルネオ島やインドネシアでは一定の降水量が確保されているが、タイ、ベトナム、カンボジアなどでは殆ど降水量が確保できていない。こうした中、産地相場の堅調地合が国際ゴム相場を強力にサポートしているが、産地主導で大きく値位置を切り上げるまでの勢いはみられず、上海・東京ゴム相場はともに底固いながらも決定打を欠いている。
東京・上海ゴム相場ともに2月中旬で底入れ感があるものの、明確な上昇トレンドを形成できるまでの勢いもない中途半端な地合にある。雨季から乾季への移行が着実に進む中、減産期型の産地主導の上昇圧力が見られるか否かが引き続き注目されることになる。
また国内市場に関しては、円高圧力の強さに注意が必要である。米保護主義施策に対する警戒感、金融市場の不安定化などから円高圧力が発生していることは、円建てゴム相場の下振れ要因になる。
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