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【特集】低燃費タイヤ「低燃費の次に求められる性能は」

横浜ゴム、ゴム配合技術と新素材開発がキーに、新しい要素技術も継続して追求

タイヤ 2017-06-05

タイヤ第一設計部部長 渡部弘二氏

タイヤ研究開発部部長 桑島雅俊氏

網野研究室研究室長 網野直也氏

消費財製品企画部製品企画1グループリーダー 大前貴睦氏


 ■タイヤの構造、パターンも重要
 桑島 「ゴムの性能は非常に重要であり、その辺の取り組みは材料開発や設計の部署で取り組んでいるが、私の部署(タイヤ研究開発部)では材料以外のプロファイル、構造、パターンなどについて日々研究開発している。当社はこれまで様々な要素技術を蓄積してきた。今後もさらなるウェット性能、転がり抵抗性能等のレベルアップを図っていくためには、常に新しい要素技術を継続して追求していかなければならない。その一方で、これらと背反する性能をいかに両立させるかが今後のポイントになってくるとみている」

 ■ポリマーの改質技術
 網野 「私の部署(網野研究室)ではポリマーの改質は手がけていないが、それを行うグループがあり、そこと連携しながら新しいゴム材料の研究を行っている。また、我々はポリマーの製造はできないので、ポリマーメーカーさんなどとご相談しながら新しい素材、改質ポリマーをつくっていただいている。こうした新しい素材は、低燃費性能の部分でかなり寄与しており、まだ伸びしろがあるとみている」

 ■摩耗性能、ロングライフも
 渡部 「先ほども言ったように、当社の最近の新商品はA-aがベースとなっているが、当然お客様もプラスアルファの性能を求めているので、お客様の要望に応えるようなタイヤを開発する必要がある。現在、A-aに運動性能を両立させた『アドバン・フレバ』、A-aに静粛性を両立させた『ブルーアース・エース』を発売している。個人的には、A-aプラス摩耗、ロングライフという組み合わせの商品も開発する必要性が出てくると思う。プロファイル、構造の最適設計により、以前に比べて接地特性は大幅に向上しているため、摩耗に関してもレベルアップしている」

 桑島 「性能の最適化技術のひとつとして多目的設計探査も用いている。これは自己組織化マップにより、設計情報の可視化を行い、例えば摩耗寿命と偏摩耗性とをバランスさせるような設計パラメータを見出すというものになっている」

 ■多目的設計探査シミュレーション技術
 網野 「当社は2015年、ゴム材料の多目的設計探査シミュレーション技術を開発した。これを活用して低燃費性能と安全性能、超軽量と高剛性など背反性能を高次元で両立した高性能タイヤを新しいアプローチで開発している」

 ■次世代型低燃費タイヤ開発の方向性
 大前 「2010年に『ブルーアース』ブランドタイヤを上市し、今日ではブルーアースも第2世代に入り、性能も大きくレベルアップしている。今後は低燃費性能の向上を進めつつ、多様化するお客様の要望、例えばスポーツ性能、快適性など、本来もっとタイヤに期待されているものが強く出てくると考えており、それらをバランスよくお客様へ提案できる商品戦略を展開していけたらいいと思う」

 網野 「低燃費性能プラスアルファが求められてくると、ゴムの開発も高度化していかないといけないし、開発自体も難しくなってくるだろう。新しい素材を見つけたり、使いこなしたりする技術が必要になってくるが、その組み合わせは無数にある。すべて実験はできないが、いかに方向を見定めて取り組んでいくかが重要となる。そのためにはスプリング8や多目的設計探査シミュレーション技術などを駆使し、分子レベルからの設計を含めて最適な方法を見定めて開発を行っていきたい。また加工技術も重要であり、練るのが難しかったシリカも普通に練れるようになったが、さらに進化させる必要がある。設備もシリカ用に変えていく必要があるだろう」

 渡部 「お客様の様々なニーズに対応することは当然だが、さらにスピードを持って対応していけるかが、今後の勝負どころだ。そのためには、シミュレーション技術の向上も必要であり、すべての性能に対してシミュレーションで対応できていないため、今後も新しいシミュレーションの開発は不可欠だと考えている」

 桑島 「ウェット、転がり抵抗、摩耗のみならず、基本的な性能を向上させる技術は継続して突き詰めていかなければならない。新規技術をいかにスピード感を持って創出していくかが我々の課題だ」

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