【特集】低燃費タイヤ-メーカーに聞く「低燃費の次に求められる性能は」
東洋ゴム工業、「ナノバランステクノロジー」
タイヤ 2017-05-11
東洋ゴム工業は今年3月に発表した新中期経営計画「中計’17」の中で、タイヤ事業の技術戦略については独自のタイヤ設計基盤技術の強化(進化)と、商品化に向けた要素技術の革新の2つを中心に取り組む。
特に前者については、2011年に確立した独自のゴム材料開発基盤技術「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」をさらに進化させ、より高性能なタイヤ開発が可能となる技術革新を図ったと、昨年11月に発表した。
ナノバランステクノロジーは、ゴム材料を分子レベルで観察、予測、機能創造、精密制御することで、理想的なゴム材料を高精度に開発する技術。ナノ分析、ナノ解析、ナノ素材設計、ナノ加工という4つの体系を横断的に統合している。
低燃費性能とウェットグリップ性能の相反する性能を高次元で両立させた低燃費タイヤブランド「NANO ENERGY(ナノエナジー)」シリーズのほか、他の乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤなどの開発にもナノバランステクノロジーが採用されており、低燃費タイヤ開発の根幹技術となっている。
同社では、ナノバランステクノロジーの確立以降、4つの各体系における技術革新を進めてきたが、特に今回「ナノ解析」および「ナノ分析」の部分でさらなる性能向上につながる進化を実現した。
その新たな技術革新とは、ナノ解析における進化である「ナノ タンデルタ シミュレーション」とナノ分析における進化である「ナノ ダイナミック サーチ」の2つ。
ナノ タンデルタ シミュレーションは、エネルギーロスとタンデルタ(粘弾性)の関係性を定量評価し、ゴム特性を短期間で予測可能にした技術。実際のゴム配合に近い精緻なシミュレーションモデルを構築し、そこに分子動力学シミュレーションを用いることで、エネルギーロスとタンデルタのマスターカーブを精度よく計算、グラフ化して定量評価する業界初の解析技術となっている。これにより、求める性能を導き出すための必要な配合予測が飛躍的なスピードでできるようになり、従来10年単位の時間を費やしていた計算が、2、3日という実用レベルで可能となった。
一方のナノ ダイナミック サーチは、フィラー分散の3次元観察と動的環境下でのゴム材料内部の運動状態を観察することで、エネルギーロスを起こす構造の確認を可能にした技術。フィラー構造における分散性など配合状態を3次元で観察できる技術、Spring-8の高輝度X線によってゴム内部の変形挙動を観察する技術、ゴム材料内部のフィラーの変化挙動を観察し、それら情報を取得する業界初の分析技術により確立した。これにより、ゴムの路面への追従性やフィラーの凝集体の動きから、可視化したエネルギーロスの確認が可能となった。
同社では、これら技術を採用したフラッグシップ新商品「PROXES Sport(プロクセススポーツ)」を昨年11月、ドイツ・エッセンで開催されたエッセンモーターショーで発表し、今春から欧州市場で先行発売している。プロクセススポーツは、従来品である「PROXES T1 Sport」に比べ低燃費性能、ウェットグリップ性能ともに約10%向上。ウェットグリップ性能は、EUのタイヤラベリングにおける最高評価の「A」を獲得している。日本市場では、今年5月から発売開始した。
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